パチンコ 横綱物語

パチンコ 横綱物語

「君が仮面を脱ぎたいというのであればそうすればいい、理由は何でもいい、自分の為でも男の為でも仕事の為でも、掟では君は縛れない」「・・・はい、ありがとうございます」自分の村にいなかったエルフからの助言に石動は頭を下げて感謝していた何とも堅苦しいと思っていたのだが、これも石動らしいと思いつつ、食事を続けていると石動が思い出したように明利に目を向けた「そう言えば幹原、イーロンが寂しそうにしていたぞ、顔くらい見せてやったらどうだ?」「本当に?今どこにいるの?」「今は城島女史が預かっている、食事が終わったら顔を見せに行ってやれ」昨日今日と明利に巻き付いていないということでイーロンは妙にそわそわしているらしい一時期とはいえ親代わりになっていた明利が急にいなくなるというのは彼女としても寂しいのだろう城島が預かってくれているという事で問題行動は起こさないだろうが、今後が心配になるたった二日いなくなっただけでそわそわするというのはどうなのだろうか、土日は割り切っているらしいのだが平日はまだまだ親離れは無理のようだった「それじゃあ後で様子見に行くよ、今日はこの後学校からでちゃうからそこまでいっしょにはいられないけど・・・」この後は学外に出ていろいろと案内しなくてはならない、それを考えると長時間は一緒にいられないが少しでも顔を見せれば安心するかもしれない動物の子供というのはなかなか手間がかかるなと思っていると、エドが小声で話しかけてくる「・・・そう言えばシズキが何か飼っていると言っていたけど、今メーリが話しているのがその動物なのかい?」「あぁ、この学校で飼ってるんだ、なんなら見ていくか?びっくりするぞ?」静希の言葉にエドは何を言っているんだいと鼻で笑う「僕は世界中いろんなところに行っていろんな動物を見て来たんだよ?今さら学校で飼えるレベルの動物では驚かないさ」さすがに自分の中に蓄積された経験に自信があるのか、エドは胸を張って自信ありげに鼻を鳴らしているが、その自信がいつまで保っていられるか見ものであるなにせ今学校で飼っているのはただの動物ではないのだ奇形種、しかも完全奇形だ、場所によっては即射殺もあり得るような危険な動物であるそんなものを学校で飼っているというのも奇妙なものだが、今のところ生徒にも教師にも順調に懐いているようで何よりだこの前校長に巻き付いているのを見た時にはさすがに肝が冷えたが、校長も案外イーロンのことを気に入っているようだったなんでもイーロンの飼育小屋の出費には校長のポケットマネーも含まれるのだとか、私財を投じてまでイーロンの生活環境を改善するというのは教師としてどうなのだろうかと思うのだが、気に入ってくれているのであれば何よりである無論生徒や教師の中には爬虫類が苦手な人もおり、イーロンを見るたびに逃げ惑っている、イーロンはそんな人の様子を見ると面白がるのだが、怯えている本人たちからすればたまったものではないたまに生徒たちが面白がって教師相手にイーロンを差し向けようとしている時があるのだが、今まで見たこともないほどの俊敏さで逃走されたらしいイーロンのいる生活はすでに日常になっている、後は彼女がどれだけ成長するのかという問題を抱えているくらいである「ミスターイガラシ、飼っているのはどんな動物ですか?」「可愛いですか?それともかっこいいですか?」アイナとレイシャの質問に静希はどう答えたものかと悩んでしまう、なにせギリギリまで内緒にしておきたいのだエドには爬虫類系だと教えているが、この二人が知っているかは微妙である「一応格好いいかな・・・?いや可愛い系なのかな・・・俺あいつに嫌われてるからあんまりわからん」「へぇ、嫌われてるんだ・・・あぁ、だからこの前あんな事聞いてきたんだね」あんな事とは悪魔の契約者の副作用についての事である、悪魔と一緒にいる事で動物に嫌われることはあり得るかとエドに聞いたことがあるのだ結局静希がイーロンに嫌われているのは悪魔などは関係なく、ただ単に彼女の好みの問題としか言いようがない「意外だよ、シズキはそう言うのは気にしないと思ってたんだけどね」「別に嫌われても問題はないけどさ・・・生まれた時から見てるのに何で俺だけ嫌われるのかわからないんだよ」「あんたが危険人物だからでしょ?」鏡花の指摘に静希はそんなことはと否定しようとするのだが、静希自身自分が危険人物であるという自覚があるために否定できなかった「ハハハ、危険人物が嫌われるなら僕やカレンも嫌われるかもね、一応危険人物だし」「・・・いやぁ・・・どうでしょう・・・エドモンドさんって人よさそうですし・・・」悪魔の契約者という意味ではエドもカレンも静希と同様危険人物という事になるのだろうが、静希と違ってエドとカレンは性格的に問題はない静希の攻撃的過ぎる性格とは真逆と言ってもいい人の好さを持つエドと、危うさを持ちながらも家族想いなカレン、危険な性格をしているとは思えなかったイーロンに嫌われるかどうかはさておき、鏡花にとっては静希並の危険人物は城島位しか思い当たらない、だが彼女は逆にイーロンに気に入られているやはり好みというのが一番の理由なのだろうと鏡花は勝手に解釈していた食事を終えた静希達はエドたちを連れてイーロンを巻き付けた城島がいるであろう職員室へやってきていたノックしてから中に入ると、やはりというかイーロンを首に巻き付けた状態で昼食をとっている城島を発見するそしてイーロンはいち早く明利に気付き、城島の体からするすると離脱すると明利の下へと足早にやってきた「イーロン、元気だね、体調もよさそう」「・・・なんだ幹原か・・・そいつに会いに来たのか」唐突に巻き付いていた重みがなくなったことで体が軽くなったのか、城島は首を鳴らしながらため息をついている中々大きくなってきたイーロンを乗せるのも疲れるようだ、特に城島はイーロンに気に入られている、比較的巻き付かれている時間が多いのかもしれない待ってましたと言わんばかりに明利に巻き付くイーロンは、体を揺らしてリズムをとっている、まるで機嫌のよさを体で表しているようだった、随分と妙な行動をとるようになったなと思っていると、その様子を眺めていたエドは驚愕に目を見開いていた「し、シズキ、この子がイーロンかい?」「そうだよ、本名スィー・イーロン、この学校で飼育してる動物だ」俺は嫌われてるけどなと付け足す中、エドは明利に巻き付いているイーロンをまじまじと観察するそして感心しながら何度も頷いてすごいなぁと呟いていた「さすが日本・・・まさか学校でドラゴンを飼育しているとは・・・久しぶりに思い出したよ・・・日本はクレイジーだって」どうやらイーロンの見た目から彼女がドラゴンであると信じて疑わないようだった、一緒に見ているカレンやアイナ、レイシャ、そしてセラまでもイーロンがドラゴンであると思っているようだ確かにイーロンの外見はドラゴンのそれに近い、というかまさにそのものと言っていい、外人組が見間違うのも仕方のないことだろう「・・・いやエド、こいつは別にドラゴンじゃないぞ?ただの完全奇形だ」「なんだって!?完全奇形!?ならなおさらクレイジーじゃないか!あんなものを飼育するなんて・・・頭のネジが数本吹き飛んでるとしか思えないよ!」どうやらエドも昔完全奇形というものにあったことがあるのだろうか、その危険性は十分理解しているようだった今まで静希が接触したことのある完全奇形は二体、そのどちらも巨大な外見をしていた、そして仕留めるのにかなり苦労した覚えがある一回目はザリガニ、二回目はトカゲどちらも巨大で厄介な能力を持っていた、その危険性は静希も十分に理解できる、エドがクレイジーというのもなんとなく理解できる「というかシズキ、メーリは巻き付かれているけど大丈夫なのかい?」「あぁ平気だよ、明利はイーロンの親代わりだったからな」親代わり、その言葉にエドは再び驚愕の表情を作るいかにも小動物のような明利と、危険な生き物の代名詞ともなっている完全奇形、そんな両者が疑似的にとはいえ親子の関係を築いているという事に驚いているようだった「・・・僕は今までメーリのことは無害な子だと思っていたんだけど・・・認識を改めなきゃいけないかもしれないね・・・」「・・・あれ?ひょっとして私危険人物認定された?」イーロンと戯れ、アイナやレイシャ、セラたちにイーロンを触らせている中、いつの間にか無害ではないと思われたことで明利は若干動揺していたただ一緒にいるだけなのになぜ危険判定が下されたのかと、明利は目を白黒させていた「いやメーリ、君は自分の才能に気付いた方がいい、見てくれよ、君の周りにいるのは良くも悪くも危険人物ばっかりじゃないか、もしかしたら君は危険なものに好かれる才能を持っているのかもしれないよ」「そ・・・そうだったの!?」「・・・あー・・・そう言えば明利の周りって危ない人多いわよね」「鏡花ちゃん!?否定してよ!」エドの言葉に静希はそう言えばと思い返す、確かに静希達の周辺には基本危険人物が多いが、その中で唯一と言っていいほど無害だったのは明利だそして確かにエドの言うように明利は危険人物に好かれているような気がする、静希や雪奈然り、イーロンやメフィ達然り「そうかぁ・・・私はずっと静希が面倒を引き込んでるんだと思ってたけど・・実際は明利が呼び寄せてたのね?」「そ、そんなぁ!私そんなことしてないよ!」「それだけイーロンに好かれてるのを見ると説得力に欠けるのよねぇ・・・」明利としては何の自覚もないことなのだが、確かに明利は危ない存在に好かれる傾向にある、鏡花のいう事もあながち理がないわけではないのだ無論証拠など何もない暴論に近いが、妙な説得力があるのは確かである思えば喜吉学園において鏡花が最初に話したのも明利だ、危険人物を引き寄せるという意味で言うなら、明利こそがすべての元凶なのかもしれない明利の周りにいる危険人物を列挙するとその壮絶さがわかる、静希、陽太、鏡花、雪奈、実月、メフィ、邪薙、オルビア、エド、カレン、その他もろもろ静希を経由して知り合った人物ももちろんいるが、その中で唯一無害というのは確かに不可思議な点だ、これで全員危険人物ならまだ類は友を呼ぶで片が付く明利の意外な才能に静希達は目から鱗が落ちる気分だった

「お前達、そんな雑談をするために職員室にわざわざ来たのか?」「あ、いえ、こいつらにイーロンを見せておこうと思って留学したら会うことになるし」こいつらというのはアイナとレイシャの事である、現在はイーロンに巻き付かれてテンションが上がっている、どうやら嫌いなタイプの動物ではないようだった「ふん・・・まぁいい、この後授業もある、あまりうるさくするな、それと早目にそいつは誰かに預けておけ、ずっと移動しているとそいつも疲れるだろう」これからまた学校内を案内するにしても外に出るとしても移動することには変わりない城島の意外な気づかいに静希達は目を丸くしながらレイシャに巻き付いているイーロンを引き剥がそうとした「じゃあ先生、とりあえずお願いします」「・・・またか・・・適当に誰かに預けておくぞ」明利の次に懐かれているのではないかと思えるほど、イーロンは城島がお気に入りだ、そして城島もまんざらでもないのだろう、イーロンに巻き付かれても特に抵抗はしなかったそれどころかイーロンの首の後ろ辺りを軽くなでている、随分と扱いが上手くなったものだと思いながら静希達はとりあえず職員室から離脱することにした「いやぁ驚いた、まさかあんなものを飼っているとは・・・」「あいつまだ生後一年経ってないんだけどな、あいつの親は凄いでかくてさ」静希の説明にエドは感心しながらあることに気付いたのか、演習場や校舎の外を眺めている、何かを探しているようなのだがその何かは見つからないようだった「シズキ、あの子の親はどこにいるんだい?すごく大きいんだろう?」「あー・・・その・・・なんて言えばいいのか・・・」「私達の討伐目標がイーロンの親だったんだよ、それで卵を見つけて生まれたのがあの子」言いにくそうにしていた静希など気にせず雪奈がそう説明すると、エドは複雑そうな顔をしていたどんな形であれ静希を敵に回してしまったのだ、となればイーロンの親の末路はすでに決まっているに等しい「それはまたなんというか・・・皮肉だね・・・」「俺も最初は処分したほうがいいって言ったんだけどな・・・奇形種を手懐けることができるメリットは大きいだろうってことで・・・」あの現場では処分、研究所行き、飼うという三つの意見があった、本当に安全を考えるのであれば処分する方がよかったのだろうが、明利に懐いてしまっていたうえに委員会の方にも話が伝わってしまったのではもはやどうしようもない幸いにして学校のほとんどが協力的であるために今のところ問題は起きていない問題はイーロンが大きくなった時だ、きっと近隣住民や、まったく関係のない団体などから文句を言われることになるのだろうそれほどの大きさになるのが一体いつのことになるのかはわからないが、今はこのサイズのままでいてほしいと願うばかりである「ちなみにあの子の姉弟とかは?爬虫類の奇形種なら・・・」「あぁ、一応他の学校にも散らばってるよ、どんな外見かは知らないけどな」研究所で生まれたイーロンの姉弟たちはそれぞれの専門学校に引き取られ、何匹かは研究所で暮らすことになっているようだった生まれてすぐに人間に慣れれば危害を加えることは少ないかもしれないし、何よりしっかり飼育することで牙を抜くというのもある動物園などで暮らしている生き物たちが野性を忘れるのと同じだ、基本怠惰な生活を送れば当然のように攻撃などの能力は極端に落ちる野生に生きているからこそ身につく生存本能が薄れることで、奇形種もただの動物以下にできるのだ「日本は本当にクレイジーな国だ・・・まさか完全奇形の子供を学校で飼育しているだなんて・・・」「まぁ生まれたばっかならあまり関係ないって、それに人間に慣れてればそれなりに安全だよたぶん」絶対と言い切れないところが不安の種になっているのだが、その不安は別に静希が背負い込むことはないのだ、面倒はよそに押し付ければいいだけである「エドは完全奇形にあったことがあるのか?例えば戦ったこととか」「一応学生時代に一回だけね・・・大きな亀だったよ・・・そりゃもう大きかった、背中に甲羅があるんだけどさ、すごくたくさん棘があってすごく危なかった・・・」ひっくり返したらすごく暴れてねとエドは遠い目をしながらその時のことを思い出している何でも学生時代、能力を持つ学生の中でいくつかのチームが合同で作戦に参加していたらしい、エドはそれを記録、及び補助するために同行していたのだとかエドの能力から言って攪乱程度しか仕事はできなかったらしいのだが、巨大なカメという事もありひっくり返してしまえばこっちのものだと高を括ってその通りにしてみたところ、亀の逆鱗に触れたのか大暴れ能力を発動するわ辺りのものを破壊し始めるわで大変なことになったらしい日本でもイギリスでも、動物が暴れると大変なことになるのに違いはないらしいそして日本のクレイジー度合いが随分とエドの中で上がっているようだった実際に住んでいる静希達からすればそんなことはないのだが、外の国から見ていると明らかにおかしいことをしているらしい確かに完全奇形を飼育するという事に関してはおかしいことをしているというのはわかるが、そこまで強調するような事だろうかと思えてならないもはやクレイジーというのは一種の褒め言葉なんじゃないかと思い始める反面、自分の住む国は本当に大丈夫だろうかと心配になる静希だった学校の案内もほどほどに、静希達はエドが一番気になっていたであろう源蔵の下に向かうことにした本物の刃物を扱っていることもあり随分とテンションが上がっているようで妙にそわそわしていたそしてそれはエドだけではなく、外国人全員だった、実際にこういう場を見ることができるというのはかなり貴重な経験なのだろう静希が源蔵の営む大峡刃物店にやってくると、外人グループは目を輝かせていたもう店の前からすでにいろんな刃物が見えているのだ、無理もないかもしれない「源爺!いる?」「あれ、静希君、それに雪奈ちゃんも、どうしたの・・・って妙に多いね」静希と雪奈を先頭にやってきた一団を迎えてくれたのは源蔵の息子の武彦だった、珍しい大人数の客に何やら怪訝な表情をしているなにせ昔から知っている少年少女が外人の客を連れて来たのだ、この反応も無理からぬものである「武彦さん、源爺は今」「奥で仕事してるよ・・・この人達なんだい?旅行者?」「あー・・・いや父の仕事の関係の人でして、まぁ結構お世話になってるんですけど・・・奥行ってていいですか?」それは構わないけどと武彦は若干不安そうにしていたが、静希達が一緒にいるという事で問題ないと判断したのか、一団を奥の仕事場へと通してくれる表の店においてあるのは一般的な刃物ばかり、武器などはすべて仕事場兼保管庫にしまわれている、過去雪奈が使った大剣もここにしまわれているのだ「ここが雪奈さんたちの刀を作ったところだったのね・・・初めて来たかも・・・」「そっか、鏡花ちゃんは初めてなんだ、私はそれなりに来てるけど・・・爺ちゃん元気かね」奥の仕事場にやってくると中からは金属を叩き付ける音が聞こえてくる、今はまだ仕事をしているようだった、せっかく来たのだからいろいろと見せてやりたいものがあるのだがと思い扉を小さく開けると中から熱風が吹き荒れる奥ではどうやら何かの刃物を作っていたのだろう、源蔵が真っ赤になった金属を特製のハサミのようなもので掴んで様子を見ていた「源爺、今平気か?」「あぁ?なんだ静坊、それに雪嬢ちゃん・・・ってなんだなんだぞろぞろと・・・」静希と雪奈だけではなく他にもずいぶんたくさんいるという事に気付いたのか、源蔵は眉間にしわを寄せる一旦仕事を止め静希を迎えると、源蔵は陽太の方を睨む「おう、火種の小僧もいたか、今から手伝っていくか?」「ふふん、俺はもはや火種だった頃とは違うんだよ、試してみるか?」久しぶりに陽太が来たことに喜んでいるのか、源蔵は鼻で笑いながら鏡花の方を見る「こっちは見ん顔だな・・・」「あぁ、こいつ去年こっちに越してきた清水鏡花、俺らの班の班長をやってるんだ」「は、初めまして、清水鏡花です」鏡花が頭を下げるとふんと鼻を鳴らした後で小さくため息をつく「こいつらを引き連れるとなると苦労もあるだろうが、まぁ頑張ることだ」源蔵が困ったような表情を浮かべる中、いつの間にかその場にいなくなっていた雪奈は仕事場を歩き回っていた「爺ちゃん!これ何!?また新しいの作ったの?」「このクソガキ・・・勝手に触るなと何度言わせる!」ある程度の刃渡りのある刃物であれば能力を発動することでどんな性能を持っているか瞬時にわかる雪奈だ、昔からこのように刃物に触れては源蔵に怒られていたのであるそして高校三年生になった今もそれは変わらない、なんというか成長のない姉貴分である「す、すごい!こんなにたくさん武器がある!ファンタスティックだね!」「あー・・・まぁ使うのはほとんど雪姉だけどな」源蔵が雪奈の首根っこを掴んで静希達の下に引きずってくると、源蔵はようやくエドたちに目を向ける外人がこんな所に来るのは初めてなのだろう、目を丸くして観察していた「静坊、この外人さんたちは?家族連れか?」「いやその・・・ちょっといろいろ都合があるんだけど・・・」エドとカレン、そしてアイナとレイシャにリット、そしてセラがいる場面では確かに家族と思われても不思議はないのだが実際血縁関係があるのは一人もいない日本人は外国の人間の顔を見分けられないというのもあるのだが、どう説明したらいいのか困ってしまっていた「とりあえず右から、父さんの仕事関係の人エドモンド・パークス、同じくカレン・アイギス、その弟子アイナ、レイシャ・・・んでうちに遊びに来てる子供、セラ・レーヴェだ」「あー・・・まぁなんだ、いろいろってことだな」どうやら源蔵は最初から覚えるつもりがないのか適当に話を聞き流している感がある自分がわざわざ関わることでもないと半ば理解しているのだろう、長年の勘というものだろうか、関わらない方がいい人間というのは理解しているようだった「で?こんなところに何故連れて来た?観光か?」「まぁそれもあるんだけど・・・その、武器を色々見せておきたくてな」静希が視線を向けると保管してある武器群を見てエドたちは目を輝かせているのがわかる、それを見て源蔵は状況を理解したのかなるほどなと呆れながらつぶやく外人のセンスはよくわからない、それを彼自身理解しているのだろう、それ以上言及することはなかった

「忍者装備っていうと・・・この辺りだな、ほれ」エドの求める忍者装備の類を源蔵が作ったことがないかと尋ねると、源蔵は奥の棚からいくつかの箱を持ってくるその中には確かに手裏剣や苦無のようなものが収められていた「おおおおおおおおおお!これだよこれこれ!これが本物か!まさにエキゾチックジャパン!」源蔵の作った本物に近い忍者道具の数々にエド達はすっかり夢中なようだった実際は投げナイフなどとほぼ変わりない苦無や、実用性に欠ける手裏剣など、源蔵が昔遊びで作ったものばかりだ、本来の用途として使えるかどうかは疑問である「鏡花ちゃん、なんか適当に的作って、今から実演してあげようじゃないか」「はいはい・・・ちょっと地面の形変えますよ」邪魔にならないだろう場所に鏡花は人型の的を作り出す、そして雪奈は箱の中からいくつかの武器を手に取って軽くペン廻しのように振り回し始める「ふむふむ・・・まぁまぁか・・・な!」勢いよく投げた苦無や手裏剣はすべて的に命中し、深々と突き刺さる、忍者っぽい光景にエドたちは大興奮していた「ミヤマ!やってみたい!やらせて!」「んー・・・いきなり素人に刃物を扱わせるのはちょっとなぁ・・・どうしようか静・・・」雪奈の言うように今まで包丁すら扱ったことがなかったセラにいきなり投擲系の武器を渡すというのは多少リスクが高い、どこに投げるかもわからないようなことをさせるわけにはいかないのだ「最初はおもちゃで練習すればいいんじゃないか?それで慣れてきたら周囲の安全確保の後実践」「それがいいね、よし、アイナちゃんもレイシャちゃんも我に続け!早速練習しに行くぞ!」「「アイアイマム!」」雪奈は鏡花からおもちゃの手裏剣や苦無を作ってもらい、どこかで練習をしに行くようだった、相変わらず子供の扱いはうまいなと思いながらその様子を眺める大人たちだったが、その中の数名が混ざりたそうにチラチラと雪奈たちの方を見ていたのはスルーした方がよかったのだろうか「元気なこったな・・・どっかのガキどもを思い出す」「ハハハ・・・まぁ今はもうちょっとましになってると思うけどな・・・」自分たちの子供の頃のことを言われているとわかっている静希と陽太は少々気恥ずかしそうに頭を掻く昔の自分を知っているというのもなかなか恥ずかしい話だ、子供の頃のやんちゃな自分を思い出すと顔から火が出そうになるのである「そうだミスター、この刃物などを海外にも出店する予定などはありませんか?」「あぁ?んなもんないが」「でしたらぜひやりましょう!これだけのものなら絶対売れますよ!」エドはかなり熱が入っているようで鼻息が荒くなっている、唐突に商売の話を持ち掛けられた源蔵は何言ってんだこいつという表情をしている恐らくエドは国外でこの刃物の類を扱いたいと思っているのだろう、実際そう言う需要はあると思うが、源蔵にその気があるのかは微妙なところである「要するに、市場を拡張しないかって言ってるんだよ、源爺の作る刃物がいい出来だから他のところで売る手助けをしたいんだとさ」「あぁそういう事か、なるほどな、断る」理解したうえで即答で拒否されたことでエドはショックを受けていたが、この反応には静希も若干驚きだったいい出来だと言われたことに関しては好感触だったのにそれを踏まえたうえで断るというのは何か理由がありそうだった「ちなみになんで?儲けも出そうだしいい話だと思うけど?」「自分が作った刃物がどこの誰とも知らない奴に使われるのは気に入らん、武彦ならそう言った話は食いつきそうだがな」源蔵は良くも悪くも刃物という危険なものを作る仕事をしている、海外でこれらを売るという事は自分の目で見極めることもできずに自分の作る作品が散らばってしまうことになる職人として、製作者として自分の目が届かないところに商品であり作品が出回るのはあまりいい気がしないようだったそう言えばネット販売も嫌がっていたなと静希は思い出す、頑固というか意固地というか、頭の固い職人気質な人間だったなと思いだし落胆しているエドの肩を軽く叩く「こうなったら梃子でも動かないよ、外国での出店は諦めな」「うぅ・・・これだけの商品を放置しておくのはもったいないなぁ・・・僕が個人的に買いたいくらいだよ・・・」「・・・まぁ個人的に買いたいっていうならそれは好きにしろ、こっちも商売だからな」本当ですかと目を輝かせてエドとカレンは財布を取り出すカレン、お前もかと静希は眉をひそめたが、どうやら外国人は日本の妙なものを欲しがる傾向があるらしい大人げないと思えてならないが、一種のお土産のような感覚なのだろう、静希も外国に行ったときにちょくちょく買い物をするが似たような感覚なのかもしれないとはいえ忍者道具をいくつも買っていく大人というのはどうなのだろう使う機会などないのだろうが、こういうのは買って飾っておくだけでもいいのだろうか、エドたちはご満悦な様子だった「あ、そうだ・・・源爺、ちょっと槍見せてほしいんだけど」「槍?お前さんそんなもん使ってたか?まぁいい、こっちだ」静希の言葉にそれ以上疑問を持つことなく源蔵は槍の類が置かれている場所へと移動するそこにはありとあらゆる形の槍が保管されていた、陽太が使うような刺突用、十字、三叉、ハルバード、およそ槍と呼ばれそうなものはほとんどそこにあったその中にはもちろん投擲を目的としたものも含まれている、静希はその槍を一本手に取って左腕で軽く投げるモーションをして見せる以前実習で鏡花の作った槍を投擲したが、あのような攻撃もできるという事を知ってからというもの何度か練習していたのだこれを機に基本装備に槍を加えるのもいいかと思ったのである「折り畳みの槍とかってあるかな?あるいはもうちょっと楽に収納できるタイプの」「それだと強度は落ちるぞ、大きさも中途半端になる」「携帯しやすさと投擲の時に邪魔にならなければそれでいいよ、できる?」静希の注文に源蔵は頬を掻いた後近くにある棒を取り出す、一見すると三十センチ程度でしかないそれを源蔵が振ると内部からマトリョーシカのように棒が飛び出てくる、最終的に一メートル近い棒になったが、その分無理やり長さを伸ばしている感は否めない「こういう風に手軽に伸びる形だとどうしても強度は落ちるし、何より太さが同じにならん、それなら有事の際に組み立てる形の槍にした方がいいだろうな」「組み立てる・・・か・・・まぁそれでもいいかな・・・」静希の場合、急襲された場合はすぐに対応できる、今欲しいのは戦闘においての手段だ、あらかじめ戦闘が起こるとわかっている状況で取れる手段を増やしておきたいのである拳銃での射撃は最近はほとんどトランプを経由したものになっている、片手はオルビアを握っているためにもう片方の手、特に無理矢理に動かすことのできる左腕が攻撃に使えると楽なのだ「組み立て式ならこういうのがある、さっきのよりは強度は保証するぞ」それは先端部分がネジのような溝が作られている機構だった、それこそねじるようにはめ込めば抜けることはないだろう全てのものを繋げると長さは二メートルにも届きそうだ「ん・・・投擲用のが欲しいだけだからな・・・ここまで長くなくていいかも・・・あとは刃の部分か・・・」「投擲用か・・・貫通重視か被害重視か・・・まぁいくつか用意しておこう」「悪いね、何時頃できる?」静希の言葉に源蔵は仕事場を見ながら唸る、実際すでにできている機構を利用するためにそこまで時間はかからないだろうが、静希が使うものを作るのだ、それなりに強度も実用性も伴ったものが欲しいのが本心である「二週間だな、それで作ってやる」「ありがと、いつも悪いな」「ふん・・・で、あっちのガキどもは何時までじゃれてるつもりだ?」どうやら仕事場の前でずっと練習をしているのか、先程から雪奈たちの声がずっと響いてきている子供ならではだが、よくあそこまで元気にしていられるものだエドやカレンはそれぞれ仕事場にある武器の類をまじまじと観察している、そのほとんどが雪奈の使う武具の類だ「これだけ大きいと・・・扱う人は一体どれだけ大きいんだろうね・・・」「車でも叩き潰せそうだ・・・さすがに筋肉質な人間が扱っているんだろうな」以前雪奈が使ったこともある大剣を見て二人とも想像を巡らせているが、それらの武器はすべて雪奈が使うものであるというのは想像もできないだろう雪奈の能力を知っていなければその反応も頷けるというものである、あの細身でこれだけの武器を扱う姿は実際に見ていないと想像しにくいのだ「まぁあれだ、珍しがってるだけだから勘弁してやってよ、あいつらも一応能力者だし」「ふむ・・・まぁお前さんがそう言うならそれでいい・・・ところで静坊、左腕を見せろ、メンテナンスくらいはしてやる」源蔵に言われ静希は左腕を外し中の武器を取り出す日々静希もメンテナンスをしているが、物理的な摩耗まではどうしようもない、特に左腕の仕込み刃はその機構もあって摩耗しやすいのだ「・・・これは刃を変えたほうが早いな、少し待っていろ」左腕がないというのは何ともバランスがとりにくい、この体になって何度この感覚を味わったかもう数えられないほどである「よし、これでいいぞ・・・雪嬢ちゃんに持たせた方もこうなってるかもしれんな・・・今度持ってこさせろ、どうせメンテナンスなんてしていないだろう?」「そこはもうお察しだよ、あの人がメンテナンスなんてするはずない」静希のように保管に関して几帳面な性格であれば気にするようなこともないのだが、雪奈はかなりズボラな性格だ、毎日手入れなどするはずがない雪奈がもっている籠手型の仕込み刃も静希の左腕の刃と同じ機構を使っている、その為刃やその他の部分の摩耗が大きいのださすがの静希も雪奈の刃物の管理はしてもその手入れまでしてやるほどお人よしではない「静!そろそろ本物使ってもいいだろうから持ってきて!あと鏡花ちゃん、的よろしく!」「・・・はぁ・・・まぁあとで言っておくよ、持ってくるかはわからないけど」「期待しないで待っておくことにする・・・ほれ、行ってやれ」子供たちの投擲技術がどれだけ上がったかにも興味がある、とりあえず静希は本物の苦無や手裏剣をもって表へと移動することにした「いやぁ・・・今日は充実した一日だったよ・・・!」あの後結局エドたちは源蔵の店から投擲用の武器をいくつも購入し満足顔で帰宅することになった雪奈の指導のおかげかそれなりに投擲も上達したアイナ、レイシャ、セラの三人はそれぞれ自分の気に入った武器を一つずつ買ってもらい、大事に手入れしているセラはともかく、エドたちは本来の目的を忘れているのではないかと思えてしまう何はともあれ、明日にはセラの迎えもやってくる、ようやくこのお姫様の護衛ともおさらばできるというものである「セラ、今のうちに荷物まとめておけよ、明日には迎えが来るんだから」「えー・・・まぁ仕方ないわね」今回日本に来たことでいろいろと考え方が変わったのか、セラは特に反抗することもなく静希のいう事に従っていた鏡花と引き合わせたのは正解だったかもしれないなと静希は何度も頷く問題児の教育に関して鏡花は随分と高い能力を持っているようだ、恐らく小学校から中学校の先生になればかなり高いレベルでの指導ができるだろう「いやぁそれにしても驚いたよ、まさか静希の家にお姫様がいるなんてね」「まぁ今回の場合俺も驚いたけどな・・・学校の方はどうだった?少ししか紹介できなかったけど」「いやいや十分さ、後は試験に向けて一直線だね」少なくとも不安要素などは払しょくできたのか、エドは快活に笑っている、アイナやレイシャも学校に強い興味を覚えているようだったためか妙に機嫌がいいこのままアイナとレイシャが学校に通いたいと思ってくれれば、エドとしてはいう事は無いのだろうが、実際にあの二人がどう思うかは彼女たち次第であるそしてそんな二人は今何をしているかというと、雪奈相手にゲームで対戦をしている雪奈の相手をさせられていると言ったほうが正しいかもしれないが、楽しんでいるようだからよしとしよう「テストは今週末・・・ていうか明日だったよな?二人は大丈夫なのか?日本語とか特に」「まぁあの二人は勉強家だからね、そこまで心配はしていないさ、それに最低限読み書きができれば問題はないだろう」小学生の状態での留学というのはなかなかハードルが高いが、少なくとも英語の読み書きは苦労していない、ひらがななども書けるらしいから最低限の意思疎通には困らないだろう最悪直接喋って伝えるのが一番手っ取り早い、エドが無駄に日本通で頼もしい限りである「エドたちは留学中はこの辺りに住むんだろ?どこに住むんだ?」「住むと言ってもそんな大したものじゃないさ、近くのホテルに滞在する予定だよ、あの二人のことはシズキに任せるさ」できる限り二人の自立心などを育てたいのか、エドは今回の留学中に関してはどこかのホテルに滞在してできる限り二人には姿を見せずに過ごすつもりのようだ確かにエドがいると二人は安心するだろうが、その分留学の意味は半減するかもしれない自分で考えて行動する、そう言う行動理念を育てるためには親元から離すのが一番という事である問題はあの二人がどれだけ親元、というかエドから離れて生活できるかという事だそこまで依存しているようには見えないが、やはり二人が一番信頼しているのはエドだ、そこから離れた時にどんな反応をするかは不明である「イガラシ、荷物はこんな感じよ」「あぁ・・・それにしても随分買ったよな・・・」静希達が買ったものは除いて、セラだけが買ったものもかなり多い、秋葉原に行ったり帰ってからもいろいろと物色していたためにその数はかなりのものだこれをテオドールの部下が取りに来るかと思うと少々気の毒になる、荷物の量はもはや引っ越しのそれに等しいのではないかと思えてしまうほどだ「それで?お姫様は満足したのか?」「ん・・・まだちょっと見てみたいところもあるけど・・・今はこれでいいわ」今はこれでセラにしては不思議な言葉を使う、現状には満足しているようだが、一体どういう心境の変化があったのだろうか「少しは大人になったか?もう家出すんなよ?」「失礼ね、私は最初から立派なレディよ・・・まぁ今回は悪かったと思ってるわ」やはり鏡花と引き合わせて正解だったと静希は満足そうにセラの頭を撫でる彼女は最初こそいやそうにしていたが、撫でられることは嫌いではないのか最終的には静希にされるがままになっていた「イガラシ、レディの髪に気安く触るのはどうかと思うわ」「そうか、そりゃ悪いことをした、触らない方がいいか?」「・・・もうちょっとなら触ってていいわよ」セラは不満そうにしながらも静希に頭を触られ続けている、やはりまだまだ子供なんだなと静希はほのぼのしているとそれを見つけた雪奈が頬を膨らませながら静希からセラを奪取する「ダメだよ静!セラちゃんは私のものさ!さぁセラちゃん私にいろんなところを撫でさせるのだ!」「え?は!?」セラも雪奈のものではないと思うのだが、もはやこうなった雪奈は止められないだろうその数秒後にセラの悲鳴が聞こえてくるのはもはや言うまでもないことであるアイナとレイシャがうちに泊まっても平気かなと静希はかなり不安になっていた「じゃあねイガラシ、三日間世話になったわ」翌日、静希はセラを連れて空港までやってきていた荷物に関してはすでにテオドールの部下たちが運び出しにやってきていたため、後は本人の移動だけである、ここまでくれば静希の仕事はもう終わったようなものだ「本当にな、もう二度と家出なんてすんなよ」「わかってるわ・・・少なくともミヤマがいる間は行きたくないわね・・・」どうやら雪奈のスキンシップがかなりトラウマになったのか、思い出している間セラは若干嫌そうな顔をしていたセラは今回日本に来たことでだいぶトラウマができたようだが、後悔はしていないようだった空港で待っていると、静希達を見つけたのか、黒いスーツにサングラスをした一人の男がやってくる静希はその男に会うのは実に久しぶりだった「よぉ、随分と遅かったじゃないかテオドール、腹でも下したか?」「そう言うお前こそ随分と血色がいいじゃないか、うちのお姫様を傷物にしていないだろうな?」「お生憎俺にそんな趣味は無い・・・まぁ多少うちの奴がちょっかいかけてたけどな」雪奈の暴走に関してはこちらとしても申し訳ないとしか言いようがないためにこればかりは謝罪しようかとも思ったのだが、テオドールに頭を下げるのは静希のプライドに関わる、こればかりは誰に頼まれようと頭を下げるつもりはなかった「セラ、もう二度とこんな面倒はごめんだ、わかっているな?」「えぇわかってるわ・・・テオドール、悪いわねいつも迷惑かけて」セラの言葉に、テオドールはサングラス越しでもわかるほどに目を見開いて驚愕していた恐らく今までセラがテオドールにねぎらいの言葉をかけたことなどなかったのかもしれないテオドールは静希を掴んでセラから引きはがす「イガラシ、セラになにをした?あいつがあんなことを言うなんて今までなかったぞ」「あー・・・それに関しては俺はあんまり関わってない・・・うちのボスがちょっとセラに説教してな・・・それが影響してるかも・・・」説教そんな言葉で言えばそれほどたいしたことではないように思うのだが、鏡花がセラに行った説教は少なくとも普通の子供が受けるようなそれとは違う説教というよりも尋問に近いそれに静希もほんの少しだが怯えたほどだ、セラのような小学生が真正面から受けて平気でいられるはずがないとはいえセラは鏡花の教えから何かしら得るものがあったのだろう「説教・・・か、たしかにあいつを叱る奴なんて今までいなかったが・・・」それはセラがどれだけ甘やかして育てられてきたかがわかる発言だっただからこそ鏡花の説教が効いたのだろう、正しいことしか彼女が言っていないという事が子供ながらに理解できたからこそ、自分が間違っているという事を実感できたのだ「まぁあれだ、セラがちょっとだけ大人になったと思えよ、こればっかりは喜ぶべきところだろ?」「どうだかな・・・アランにどう説明すればいいのか・・・」勝手に日本に向かってどこの誰ともわからない人間に説教されていつの間にか少し大人になって帰ってきたこんなことをどう説明すればいいのかテオドールは少し困ってしまっていた「んじゃしっかり全員分の報酬は払っておけよ、あとこれあいつが買ったものの領収書だ、後で俺の口座に振り込んでおけ」封筒に今回使ったすべての金の領収書を入れてテオドールに渡すと、いやそうな顔をしながらそれを懐に入れる静希としても平日にいきなり依頼を捻じ込まれた形になるのだ、迷惑料という形でもしっかりと料金はいただかないと割に合わないというものである「じゃあそろそろ俺たちは行く、イガラシ、今回は世話になった」「おう、この借りは絶対返せ、熨斗とリボン付けて返せ」和洋折衷過ぎる返し方だが、そんな軽口にも反応せず、テオドールはさっさと手続きをしに受付へと向かっていった「イガラシ、今回はありがと、楽しかったわ」「そうかい、んじゃ次はきちんとした形で来い、二度と迷惑かけるなよ」静希やテオドールからしたら今回はいきなりやってきた面倒事だった、それも目が飛び出るほどのもう二度とこんなことはごめんである「わかってるわ・・・シミズに伝えておいてほしいの、ありがとって」「・・・はいはい伝えておくよ」静希の言葉に安心したのか、セラは小走りでテオドールの下へと走っていく出国手続きも済ませ、イギリスに帰る途中、セラはテオドールの方を見上げてあることを聞いていたそれは聞かなければいけない、聞いておきたいことだった「テオドール、教えてほしいことがあるの」「なんだ?宿題でも出たか?」「・・・えぇそうね、宿題よ」静希と鏡花から出された宿題、自分がどうすればいいか、そしてどうしたいのかを考えて行動する、王を目指す道「王様ってどうやって国を支配してたの?」それは彼女がようやく踏み出した、茨に満ちた苦難への道、そして夢をかなえるための第一歩だった「あぁ・・・ようやく迷惑なお姫様がいなくなった・・・」「ふふ・・・お疲れ様」「二人は今テスト受けてるよ、もうすぐ終わりそうだけど」静希はセラを見送った後学校にやってきていた今日は土曜日だ、学校に来たところでやることはないのだが目的は学業ではない、丁度今試験を受けているアイナとレイシャの様子を見に来たのだ先にやってきた明利と雪奈は教室の近くに椅子を持ってきてその場で待っている、どうやらテストが始まってからずっとこうしていたようだ基礎的な学力をどれだけ身に着けているか、そして日本語によるコミュニケーションがどれだけ取れるか、個人の性格なども考慮して審査するために二人はそれぞれ別の教室で多くの試験を受けている筆記から面接、そしてそれが終わった後は能力審査だ、危険な能力かどうかもそうだがしっかりと操ることができているかも審査の対象になる「エドたちは今どこに?」「エドモンドさんたちは職員室で先生たちといろいろ話してるよ、近くにいると不正もあり得るからって待ってることもできないみたい」エドがそわそわしているところが目に浮かぶようだが、時には子供の力を信じてやるのも大人の務めというものだ、カレンも一緒にいるから多少は問題ないと思うが、どうなるかはわかったものではない明利達がこの場にいても不正の心配をしないあたり、明利たちの能力では不正の類はできないという事を知っているのだろう『エドが妙なことをしていなければいいが・・・』『カレンも一緒にいますから、問題ないでしょう』『あんたらのびのびしすぎよ、もうちょっと緊張感ってものを持ちなさいよね・・・』そして学校内にいる間は静希が二人の契約している悪魔を預かっているためにトランプの中が一層騒がしく思える、なにせ人外たちがひしめいているような状況なのだ悪魔三人神格一人霊装一人使い魔一匹精霊一人、六人と一匹の人外を静希が保管している状況だ、人外保管庫と言われても何ら否定できないそしてしばらくすると教室からアイナとレイシャがほぼ同時に出てくる、恐らくペーパーテストと面接がある程度終わったのだろう、二人ともやや疲れた表情をしていた「お疲れ様、どうだった?」「あ・・・ミスターイガラシ・・・問題自体は難しくはありませんでした・・・国語以外は・・・」「やはり漢字がネックです、まだ簡単なものしか読み書きできませんので・・・」算数や理科などの日本語がなくてもある程度分かる教科に関しては問題なく解けたようなのだが、やはり日本語の漢字を多用される国語などは彼女たちにとっては難関なようだった「まぁそのあたりはこれからだな、次は能力診断か?」「はい、何かアドバイスをいただければ」「はい、助言を頂けるとありがたいです」能力のテストと言われても静希はいつも同じような事しかやったことがない、なにせもう長いこと能力が変化していないのだ、こればかりは変に気張ったところでいい結果は生まれない「まぁ今できることをやればいい、見栄を張る必要はないからな」「「了解しました」」二人は一緒に演習場の方に駆けて行った、能力の診断、どんな能力を持っているかよりもその制御が重要だあの二人であれば心配はいらないだろうが、やはり気になるというものである『二人ともどうする?エドとカレンの所に行くか?』『・・・いや、このままあの二人を見ていてくれ』『カレンたちからもあの二人を見ているように頼まれましたからね』どうやら悪魔二人はアイナとレイシャの臨時保護者を命じられているようだ契約者と一緒にその成長を見守っているからか若干情がわいてきているように思える特にヴァラファールはその傾向が強い、時折訓練をしているという事からか、それなりに心配なようだった「んじゃ俺らも様子を見に行くか、どうせ暇だし」「二人の能力で試験か・・・確か強化と発現だっけ」「身体能力強化と透明化だな・・・どの程度のものなのかはわからないけど」アイナの透明化は見せてもらったが、レイシャの能力はまだ見ていない話に聞くのと実際に見るのとでは大違いだ、どれくらいの性能なのか、そう言う特性があるのか、そしてそれを制御できているのかどうか、今回重要なのはあくまで操作性と制御率万が一にも暴走がないようにしなければいけないのだ、そう言う意味ではいかに平静を保てるかというのが重要になってくる親代わりになっているエド達から離れてどれだけの実力が発揮できるか、正直不安な部分もある恐らく悪魔たちも同じような不安を感じ取っているのだろう、先程から二人のことに集中しているように見えるそのうち手を出しそうな勢いだが、そのあたりは二人ともきちんと良識のある悪魔だ、悪魔なのに良識があるのもどうかと思ったが、少なくとも変な手出しはしないだろうなんというかこれほどまでに悪魔に心配される子供というのも貴重なものだ悪魔の加護でも受けているのかもしれないなと思いながら静希達はアイナとレイシャの後を追うべく演習場へと移動した「ん・・・なんだお前達も来たのか」演習場に到着するとそこにいたのは城島だった、無論他の教師もアイナとレイシャに注視している、恐らく喜吉学園にいる教師数人がかりで彼女たちの能力を調査するのだろう何とも大がかりな話になっているのだなと思いながら静希達はとりあえず挨拶をすることにした「知らない仲でもありませんからね・・・一応心配で」「ふん・・・まぁお前達なら問題はないだろう・・・あの二人の能力に関してどれだけ知っている?」「一度見たことがあります・・・詳細は知りませんが・・・身体能力強化と透明化です」静希の言葉に城島はふんと鼻を鳴らす、いい能力であるのは彼女も理解しているようだった、ただ問題はこの場でどれだけ扱えるかだ「二人ともリラックスだよ!頑張って!」「ファイト~!頑張れ~!」明利と雪奈はすでに応援モードに入っている、静かに見るという事はしないようだったそして教師たちも静希達に気付いているが、静希達の能力をある程度把握しているからか、この三人なら不正をしようがないという事を理解し放置しているようだった多少なりとも緊張がほぐせるのであればそれもいいと思っているのだろう、少しでもリラックスした状態で能力を発動させるのがベストだ、問題は彼女たちがどれだけ緊張をほぐせるかという事である「ではまずアイナちゃん、能力を使ってみてください」「はい!いきます!」彼女は懐から一枚の布を取り出して見せたまずは小さなハンカチだ、両手で持って広げて見せると、徐々にそのハンカチが透明になっていく十秒ほどでハンカチは完全に視認できなくなった次に彼女が用意したのは大きめの布だ、折りたたんでおいたのかかなり大きく、人程度であれば容易に覆えるほどのものだったそして彼女がそれにくるまり、体の露出をゼロにした状態で能力を発動すると彼女自身も見えなくなってしまう透明化、物質そのものを見えなくするのではなく、周囲のものと同じような光景を物質に張り付ける、所謂光学迷彩のような状態にすると言ったほうが正しいだろうか隠密行動に向いている能力だ、訓練を重ねればそれこそ捕捉することも難しくなるだろう足音が聞こえることから動いているというのはわかるのだが、どこをどのように動いているかは視覚だけではとらえることができない、かなり練度が高く、なおかつ精密な迷彩効果を発揮しているようだった「はい、大丈夫です、続いてレイシャちゃん、能力を発動してください」「はい!いきます!」レイシャは中腰になり、握り拳を腰に貯めるようにして力をためていくそして次の瞬間、演習場の一角を高速で移動し始める一蹴りで十メートル程進んでいるのではないかと思えるほどの脚力、そしてそれをしっかりと認識できているだけの動体視力、しっかりと体に次の指示を伝達できるだけの反応速度どちらかというとスピードに特化したタイプの身体能力強化のようだった数分間駆け回ると、能力が切れてしまうのを見越してアイナの近くにやってくる強化できる時間に限りがあると言っていたが、数分間しか強化できないというのはなかなかに不便かもしれない発展途上と言ってもいいがこれからが楽しみな能力であるそしてレイシャは再び何かをためるような動作をすると、今度はアイナに触れる今度はアイナの身体能力を強化したのだろう、先程のレイシャほどではないがアイナが高速で移動を始めるそして一分もたたずに能力が切れたのか、身体能力の強化は終了したそれを見て静希は口元に手を当てて二人の能力を分析していたアイナの能力は物質の光学迷彩化、実際に透明化しているのではなく、周囲の風景に溶け込むようにできる上に、恐らくどの風景と馴染ませるかというのを彼女自身が選んでいるように思える先程の布をただ透明化、あるいは光学迷彩化しただけでは布に隠れていた時にアイナが見えていなければおかしい中々有用な能力だレイシャの能力は単純な強化ではないように思える、恐らく体の中にエネルギーのようなものを溜め、それが一定に達すると強化の能力を発動できるのだろうそしてそのエネルギーを他人に渡すことで強化を施せるが、本人程の効果は発揮しないアイナの方は応用性が高く、できることも多そうだ、レイシャの方はまだまだ発展途上ではあるが今後の鍛え方によっては優秀な能力者になる、チーム戦などの集団行動によってその真価を発揮するだろうそして静希が感じていることを他の教師たちも理解しているようだった二人とも非常に優秀だ、留学生なのが惜しいくらいである、いっそのことこの学校に入学してほしいと思えるほどに本来小学生の間は、能力の制御を第一に行うのが一般的だ、暴発しないようにとにかく安全に扱うことを目的に指導を行う、だが彼女たちはすでに能力をある程度使いこなしている出力こそまだ劣るところもあるだろうが、自らの能力の特性を理解したうえで扱っている、小学生の練度ではない、中学生か、あるいは高校生のレベルに達している「あれほどとはな・・・操れれば問題ない程度に思っていたが・・・」「・・・えぇ、どうやら緊張はしてないみたいですね」アイナとレイシャ、二人の能力は一見単純に見えてレベルが高い、アイナは周囲の風景と同一化できるような光学迷彩化、発現系統であることを考えると頭の中である程度自動演算しているのだろう、それに特化した能力だという事がわかる普通は透明化させるだけでも時間がかかるうえに、動いている状態ではその維持も難しいだろう、それを容易にやって見せたという事はそれだけ練度の高さがうかがえるレイシャの行った身体能力の強化は、単純であるが故にその訓練の密度がうかがえるなにせ速度重視の強化はどうしても問題が生じてしまうのだ、その問題とは自分の感覚と現実の相違である人間は基本体を動かすときにはほぼ感覚で動かしている、どれだけの力を使うか、どれだけの速さで動くか、そう言うものはほとんど自らの感覚だ、頭でいちいちどれだけの力を使うかを考えて動かすことなどはしない強化系統の能力、特に身体能力を強化するタイプは文字通り身体能力を増強することにある、それはつまり普段通りの感覚で体を動かせなくなるという事でもあるのだいつも通りの力を使ったと思ったら、普段の数十倍の力を出していたり、普段通りに動こうとしたら普段の数十倍の速度で動いていたりと、認識と現実の差異が最も大きいそれ故に、身体能力を強化する能力を持っている人間は能力の扱いと同時に自らの体の動かし方というものを学ぶ必要がある教師たちがあらかじめエドたちに口頭で能力を聞いたときに、一番危惧したのがレイシャの能力だった子供同士の喧嘩で最も怖いのは相手が強化系統だった場合であるただの押し合いなどの喧嘩だったはずが、片方がいつの間にか能力を発動させてしまい大怪我になるというのは、幼少時にはよくある話だそして子供であるが故に自らの感覚と実際の身体能力の変化についていけず、怪我をするパターンが多い、だがレイシャはそのようなことは起こさず、見事に能力と体を操っている教師たちも彼女たちの優秀さは理解したのだろうが、もう少し見てみたいと思ったのかもしれない、その場にいた城島も含め一カ所に集まって何やら話をし始めたその隙に静希達はアイナとレイシャに駆け寄ることにした「すごいじゃないか二人とも、あれだけ能力を使えるとは思ってなかったぞ」「が、頑張りました・・・よかった、失敗しなくて・・・」「ぜ、全力を出しました・・・ミスしなくてよかったです」二人とも先程まで緊張していたのか若干汗をかいている、緊張から解放されて安堵しているのが表情からうかがえるようだった「いやぁ二人ともいい能力持ってるじゃないか、いっそのことうちの子になってほしいくらいだよ」「だ、ダメです!私たちは社会人なので!」「キャリアウーマンなので!簡単に引き抜きには応じません!」雪奈の言葉に二人は強く拒否反応を見せる、エドに対する恩義もそうだが、少なくともエドからは離れたくないようだったこれだけ慕われるのは父親冥利に尽きるだろうなと思いながらも、静希は微妙な気持ちだったなにせエドは本物の父親ではないのだ、これからエドがこの二人とどのように接していくのか若干不安でもある「五十嵐!ちょっとこい!」教師たちで話し合っている中、唐突に静希が呼ばれたことでその場にいた全員がどうしたのだろうかと教師たちを眺める中、とりあえず静希は城島の下へと駆け寄る「どうかしましたか?何か問題でも?」「問題はない・・・いや問題がなさすぎるのが問題といったところか」問題がないのが問題というのも妙な話だ、それだけあの二人が優秀だという事でもあるのだが静希が何故呼ばれたのかもわからない状態で首をかしげていると、教師の一人が口を開く「彼女たちに用意していたプログラムなんだけど、恐らくあの様子だと簡単にクリアされてしまう可能性がある、それじゃ試験にならないんだ」「クリアされる分にはいいんじゃないんですか?それだけ優秀ってことですし」「今回の試験は対象にストレスを与えた状態でいかに能力を扱えるかを見るテストだ、簡単すぎてはストレスを与えられん」用意していた試験がクリアされる分には問題はないように思えるのだが、どうやら簡単にクリアされてしまうことが問題らしい問題がなさすぎるのが問題というのはこういう事かと静希は納得する当然ではあるが、能力を使うのにもある程度集中力が必要だ、リラックスしている状態や高い集中を保てている状態であれば能力はうまく扱える、だがその逆、集中を乱していたり極度の緊張状態にあると能力は上手く扱えない今回用意しているテストは対象に負荷を与えて、精神状態を乱していてもしっかりと能力を制御できるかを見るもののようだ小学生というのは良くも悪くも感情的になりやすい、万が一にも能力の暴走などがないことを確認するうえで必要なテストなのだろう、問題は彼女たちが優秀すぎて用意しておいたテスト内容が本来の意味をなしていないという点だ「そこで五十嵐、お前今日暇だろう?」「暇ですけど・・・何か手伝えとかそう言う話ですか?」「あぁ、あの二人と戦え」城島の言葉に静希は耳を疑い、同時に嫌そうな顔をする、明らかに無茶を言っていることは静希にも、そして教師たちにも理解できているのだろう「あの・・・俺一応あの二人の関係者なんですけど、もし手心を加えたらどうするんですか?」「私が監視している、もし手を抜いているところを見つけたら徹底的に教育指導してやるからそのつもりでいろ」城島は静希の担任教師だ、はっきり言って静希の実力のほとんどを把握していると言っても過言ではない一体静希を戦わせて何がしたいのかと思う中、城島は説明をするべく口を開いた「先も言ったとおり、このテストはある程度対象にストレスを与えなければ意味がない、それこそ焦りや緊張などといったものがなければ効果を表さない」「それはさっき聞きました、それで何で俺が戦うことになるんです?」「あの二人には、お前に勝たなくては留学はできないと告げる」その言葉に静希はようやく理解した、この教師たちが何をやらせたいのか「・・・教師が相手じゃさすがに勝ち目がないから・・・勝ち目がありそうな俺を当てて精神的な動揺を誘うってことですか?」「そういう事だ、時間制限を設け、お前には勝たない戦い方をしてもらう、時間制限以内にお前を倒すのが条件と言えば、向こうも必死になるだろう」確かにエドの期待を受けている以上、あの二人は意地でも留学するための条件をクリアしようとするだろう、それを逆手にとって精神的負荷を与えるあたり性格が悪いこれを考えたのはきっと城島だなとため息交じりに静希は項垂れる「さすがに怪我させちゃまずいですよね?何か木刀とか竹刀とか用意してもらえますか?」「私のトンファーでよければ貸すが?」「使い慣れてないんで」静希の要請に教師の一人が近くの倉庫から竹刀を一本持ってきてくれる、剣の類であればある程度は戦える、能力を使ってもいいのであれば他に戦いようもあるが、問題はどれだけ相手をあせらせることができるかだ「先生、あの二人への説明は・・・」「わかっている、私からしておく・・・お前は準備運動でもしていろ」この教師達の中で静希を含む悪魔の契約者たちの事情を知っているのは城島だけだ、静希がただの劣等生であると思っている他の教師たちと違い、本質が危険であるという事を知っている城島が説明するのが一番手っ取り早いだろうアイナとレイシャが静希が敵になったという時点で戦意を喪失しないように、ある程度しっかりと事情を話さなくてはいけないだろう「アイナ、レイシャ、次の試験を始める」「「は、はい!」」城島が出てきたことで明利と雪奈は若干緊張を強める、そしてその緊張は二人にも伝わっていた静希から聞いている城島は怖いけど立派な教師という事だけ、自分達にもしっかりとした指導をしてもらえるであろうことを予想していたのだが、怖いのはやはり嫌なのだろう、少しだけ体が硬くなっていた「次はお前達の素質を見る、一定時間以内にある人物を倒してもらう」「「ある・・・人物?」」城島が指差すとその先には竹刀を片手に準備運動をしている静希の姿がある、その瞬間アイナとレイシャの顔が青ざめた「む!無理です!ミスターイガラシに勝つなんて!」「あ、あの人はボスと対等な人なんですよ!私たちが勝つなんて」「できなければ留学の件はなしだ、お前達のボスにそう告げろ」圧倒的威圧感で逃げ場をなくす城島の言葉に二人は絶句してしまっていたエドやカレンから静希の戦闘能力については聞いている、どんな性格をしているのかも、そしてその危険性も戦って勝てる相手ではない、その程度の事アイナとレイシャにも理解できていた「安心しろ、あいつにも手加減はさせる・・・ついでに、奴の悪魔たちにも手は出させない」城島の言葉にアイナとレイシャは思い出す、城島は静希達の、悪魔の契約者たちのことを知っているのだ自分たちの事情もある程度は知っているのだろう、だからこそ城島はこう告げた「一応手心を加えるという意味ではないが、お前達を怪我させないような手段に限定し、なおかつあいつが使う武器はあの竹刀一本のみだ、その状態のあいつを倒せ」「あの竹刀・・・」「一本だけ・・・」静希が普段使うのはオルビアやナイフや銃、近接戦闘よりも中距離戦を得意としているのだ、それが封じられているとなれば自分たちにも勝ち目はあるのではないかと思えてしまう「ついでにこれは私からの餞別だ、お前達にあいつの弱点を教えてやろう」「弱点・・・?」「そんなものあるのですか?」勝つことができると思わせる事、今必要なのはその希望的観測だ、そして時間が経過するとともにその希望が焦りとなって精神に負荷をかける今回のテストで重要なのはその精神にかかる負荷だ、彼女たちにはせいぜい勝てると思ってもらうほかない「・・・なるほど!わかりました!」「や・・・やってみます!」「よし、今のうちに準備運動をしておけ、十分後に始めるぞ」静希の弱点を話した後城島はすぐに二人から離れて観察を始める、自分でも嫌なやり方をしているのは理解している、だが今はこれが一番楽なのだ知っている相手だからこそ手ごわい、そして勝てるのではないかと思わせることができる後は静希がどれだけの戦いをするかにかかっているのである城島の判断では、静希とアイナとレイシャの戦力差はかなり大きい実際の戦闘になったら恐らく静希が圧勝するだろう、だが条件を限定した状態ではどうなるかわからない少なくとも今回静希は殺傷能力のあるトランプの中身の使用を封じられている、具体的にはナイフ、釘、銃弾、そしてスペードシリーズ等々ほとんど体一つで戦えと言われているようなものだが、それでも城島は静希に軍配が上がると思っていた静希の戦闘経験は一朝一夕で培ったものではない、多少訓練を積んだとは言え小学生に負けるとは考えられないのだ特に静希の戦闘の訓練をしているのは近くで応援している雪奈だ、彼女の斬撃によく似た攻撃を訓練で静希が使っているのを見たことがある「先生、なんで静が竹刀持ってるんです?」「ん・・・テストの一環であいつらと練習試合をさせるんだ、五十嵐なら怪我をさせることもないだろう」静希だけ呼び出され何やら準備をした後、雪奈と明利は城島に事情を聞こうと近くにやってきていた練習試合、これも恐らく合否に関わってくるのだろうが明利と雪奈としては複雑だったどちらを応援したものか、個人的にはもちろん静希を応援したいが、留学のために頑張っているアイナとレイシャも応援したいとはいえ静希も同じ状況のはずだ、無理に本気を出して二人を潰すようなことはしないであろうことは予想できた「それってなんか意味あるんですか?てか静は武器あるのに二人にはなしですか」「ある、すでに五十嵐にはその内容を教えてある・・・これはあの二人にとっても必要なことだ・・・武器を渡そうとしたら断わられた」必要な事と言われても事情を知らされていない明利と雪奈は納得しかねていた特に静希が武器を持っているのにもかかわらず二人が武器を持っていないというのは不公平に感じたのだ、年齢も経験も実力も差があるとはいえ二対一で不公平か否かを考えるのもどうかと思ったが、武器を持っているか否かで戦い方は大きく変わると言っていいだろう明利と雪奈がそう思っていたところで、少なくともすでに練習試合をするのは決定事項のようだった、あくまで観客でしかない自分たちはどちらかを応援することになるのだが、どちらを応援しようか迷っていたどうしたものかと悩んでいる時、明利と雪奈は静希から放たれる殺気を感じ取っていた竹刀を持った状態の佇まいはすでに戦闘状態に移行している、鋭い刃のような殺気を漂わせ精神を集中させているのが傍目からでもわかる練習試合のそれではない、明らかにアイナとレイシャを一時的にではあるが敵として認識しているのが二人には感じ取れた「先生・・・本当に練習試合なんですよね?」「無論だ、あいつも怪我をさせないようにするようなことを言っていた、問題ないだろう」静希は自分の使い慣れた剣ではなく、怪我をさせないために竹刀を選択した、そう言う意味ではしっかりと気配り程度はできるだろうもっとも状況によってはそれも難しくなることは容易に予想できた「・・・刃物持ってくればよかったな・・・もし万が一が起きた時私じゃ止められないよ?」「その時は私が止める、問題はない」城島の能力ならあの場にいる三人を一度に制圧できる一人は収納、一人は強化、一人は物質に作用する発現、城島の重力操作を使えば容易に制圧することは可能だろうとはいえ、静希の殺気を直接受けているあの二人が不憫だと思う節もあるのだ、どんなに訓練していたとしても彼女たちは小学生なのだ実戦も経験したこともないような子供に、静希の殺気は強すぎるそして城島の心配通り、静希の殺気を直接肌で感じているアイナとレイシャは僅かに身震いしていた自分に向けられて初めてわかる、静希の殺気の鋭さ、鋭利な刃物で体を切り裂かれるような感覚が肌を刺激する中、アイナとレイシャは互いの手を握ってお互いを鼓舞していた勝たなくてはならない、自分を拾ってくれたエドに恩を少しでも返すためにも「では勝利条件について確認しておく、アイナレイシャ両名は時間内に五十嵐静希を戦闘不能状態にすること、気絶、拘束、どちらでも構わない、逆に戦闘不能にされた場合、あるいは時間切れになった場合敗北となる」城島の宣言にアイナとレイシャは頷いて応える何も静希に真っ向正面から戦う必要はないのだ、何とか拘束するなり、気絶させるなりすれば勝ったことになる相手は手加減もしてくれているのだ、この条件なら勝てないことはない、アイナとレイシャは互いにそう思いながら深呼吸して緊張を少しでも和らげていた「五十嵐の勝利条件はアイナ、レイシャを戦闘不能にするか、一定時間経過だ、敗北条件は先に述べたものと同じだ」「・・・先生、一つ質問があるんですけど」静希の言葉にアイナとレイシャも静希の言葉に意識を向ける、条件に何か異論があるのだろうかと思う中、静希はそれを口にした「俺は時間内、ずっと逃げ続けててもいいんですよね?」その言葉にアイナとレイシャ、そして城島は眉をひそめる「あぁ、ルール上問題ない、一定時間経過すればお前の勝ちだからな」「了解です」そのやり取りの中で、アイナとレイシャは静希が自分たちに手心を加えてくれているのではないかと感じていた正面切っての戦闘では二人に勝機がないことを悟り、自分たちに自由に攻撃させようとしてくれているのではないかと思ったのだ逃げ続ける敵を倒すのは正直かなり困難ではあるが、静希が攻撃してこないのであれば勝ち目もある、アイナとレイシャは互いに視線を合わせて同時に頷く「それでは、練習試合・・・始め!」合図とともにアイナとレイシャは戦闘行動に入るために能力を発動したアイナは布を取り出して光学迷彩を作り出そうとし、レイシャは中腰になって能力発動の準備を始める静希が逃げてくれるのであれば準備は簡単だそう、静希が逃げてくれるのであれば二人が戦闘の準備をする中、静希は一直線に二人の下へ突進してきていた逃走するとばかり思っていた二人は一瞬静希が何故こっちにやってきているのか理解できなかった左手で竹刀を振りかぶり、まずはアイナの持つ大きな布に当ててその手から奪い取る、さらにそのやや後ろにいるレイシャに向けて思い切り竹刀を振り下ろした逃げるのではなかったのか、いきなりの先制攻撃に若干混乱しながらも、レイシャは元より前衛気質、静希の攻撃を横に跳躍することで回避するだが静希はさらに追撃を続けてきた竹刀を振りかぶり連続でレイシャめがけて攻撃を仕掛けてくる静希がアイナとレイシャを同時に相手にする際、もっともさせてはいけないのはレイシャの身体能力の強化だ幸いにして彼女の能力は他人も強化できるという能力の代わりに短い時間ではあるがチャージが必要になる止まっていなければチャージができないのかどうかは静希には判断できないが、チャージする暇もなく攻撃を続ければ彼女は身体能力を強化することはできないアイナの能力は身を隠すという事に向いている、つまりは状況の攪乱が可能な能力だ二人の作戦としてはレイシャが身体能力強化で静希と真正面から戦い、隠れていたアイナが静希を拘束、あるいは攻撃するという流れだったのだろうだが静希はその起点となる隠れ蓑代わりのアイナの布を奪い取り、連続攻撃を行うことでレイシャに能力を発動させないようにした最初に逃げることを質問に含めることで意識をそちらに向け、逆に急襲する意識のフェイントのようなものだ、逃げを選択すると思っていた人間がいきなり接近戦を挑んで来ればどうしても混乱する、今の状況はまさにそれだレイシャに攻撃を仕掛ける静希だが、なかなか彼女に攻撃は命中しない、いや正確には命中はしているのだがクリーンヒットにならないのだ彼女は腕や肩などを盾にすることで静希の攻撃から身を守っている、伊達にエド達から訓練は受けていないという事だろう、静希の攻撃では彼女を行動不能にすることはできないかもしれないだが何も竹刀で行動不能にする必要はないのだ静希は竹刀を右手に持ち直し、左腕を前に出す、以前未来のどこかの誰かに対して使った戦法の一つだアイナとレイシャは静希の左腕について知っている、警戒の度合いをあげるのは十分理解できただが次の瞬間、唐突にレイシャが眼前から消えた一瞬何が起こったのかわからなかったが、静希はその耳で聞いていた、何か布のようなものが翻る音を恐らくはアイナが予備の布を持っていたのだろう、一枚布を奪ったからといって油断するべきではなかったかと静希は自らを叱咤するそして静希の眼前から消えて見せたレイシャは、アイナの光学迷彩をかぶせられたことを理解するとその場から音をたてないようにして離脱していたそして何かにぶつかる、どうやら同じく迷彩を被っていたアイナとぶつかったようだった「アイナ・・・どうしましょう・・・私が集中的に狙われています」「落ち着きなさいレイシャ、今こうして離脱できたのです、ミスジョウシマの助言通り、機動力でかき回しましょう」城島がアイナとレイシャにした助言は、静希は機動力がなく、素早い多方向からの攻撃に弱いというものだった事実静希は肉体強化などをは施されていないために、左腕で掴める物のない平原のようなフィールドでは機動力は普通の人間とそう変わらないそして動体視力もほとんど人並みだ、雪奈との訓練によって素早い攻撃に対して反応できるようになってはいるが、見えていなければ何の意味もないつまりは多方向からの、死角からの攻撃に極端に弱いのださらに言えば静希は索敵能力がない、収納系統なのだから当たり前かもしれないが、基本的に自分の体と収納したものなどを駆使することでしか戦えないのだ本来収納系統は戦闘を行うタイプではないためにこの辺りも仕方がないだろうだからこそ姿を隠した状態での連撃によって戦う、それが二人にとっての勝機となっていた二人同時に姿を消して、両方に身体能力強化を施し攻撃する、そうすれば勝てないことはないというのが城島の見解だ城島が告げた助言は確かに正しい、確かにその作戦通りに戦うことができれば静希に勝つこともできるだろうだが小さな子供が考える程度の作戦で、静希の培ってきた経験を破ることはできない「敵を目の前にしておしゃべりとは、随分と余裕なんだな」迷彩で隠れているうえに、極力声を小さくして話していたのに、静希の声は自分たちの間近に迫っていたどうやって自分たちの居場所が分かったのか、それを把握するよりも早く二人めがけて竹刀が振り下ろされるギリギリのところで回避した二人は迷彩の一部から顔をだし周囲の状況を確認しようとした二人の目の前に広がっていたのは、大量のトランプだった周囲を円軌道で移動し続け、自分たちに当たった時だけ奇妙な軌道を描いているのが見て取れる静希の作り出すトランプは触れるものを選ぶことができる、ある程度の制限はあるものの、静希がただのトランプとして操っているのであれば、その場にあるものは触れられる周囲にトランプを大量に展開し、トランプが触れた部分に透明になったアイナとレイシャはいる、索敵などとは言えないような原始的で単純な対処だ相手が透過ではなく、透明になれる迷彩を被っているという事をあらかじめ知っていなければできない対処だアイナに対してはトランプを使った対処を、レイシャに対しては体を使った対処をそれぞれ行うことで二人の能力のアドバンテージはほぼ潰した、後はレイシャの能力を使わせないようにしながら二人を行動不能にすればチェックメイトであるそしてそのことを二人も気づいていた、透明化したところで逃げられない、でもレイシャの能力発動の時間を稼がなければいけない、静希がそれだけの時間的余裕をくれるはずがないこれが経験の差、実戦を潜り抜けた人間と訓練だけを行ってきた子供の差、たとえ二対一でも、相手が加減をしていても明確に浮かび上がる優劣の差負けてしまうのではないか、自分たちは勝てないのではないか先程まで勝てるかもしれないと思っていた希望が徐々に打ち消され、強い圧力とどうにかしなければという焦りが二人の中に蔓延していたどうすればいい、どうすればいい、どうすればいい頭の中でいくつも案を考えるのだが、能力によって得られる優位性を奪われてしまっている今、彼女たちにできることはほとんどなかった「・・・レイシャ」アイナがレイシャの方を情けなくも力強い目で見つめる、そして彼女もそれを理解したのか頷いて互いに手を握る静希は竹刀を握り二人に一気に接近する、再び布を奪い、透明化自体をさせなければ自分の勝利は揺るがない二人に向けて竹刀を振りかぶる瞬間、アイナは静希に向けて突進し、レイシャは逆に後退した「うわあああああ!」アイナは絶叫と共に静希めがけて先程まで迷彩化していた布を目くらましのようにしてかぶせようとする無論そんな攻撃をされたところで静希は痛くもかゆくもない、竹刀で軽く払って布を回収すると自分の腰に思いきり衝撃が走ったいや、それは衝撃というにはあまりにも弱弱しい、自分の腰に腕を回し、アイナが思いきりタックルしてきていたのだもちろん、彼女の体躯ではタックルなどしても攻撃として意味がないのは明白だ、事実静希には何の痛みもないし静希を倒すこともできていないだが静希は彼女の行動の意味を理解していた先程から周囲に展開しているトランプがそれを知らせている、レイシャが自分からかなり遠くに離れているのだアイナが迷彩を投げた一瞬の隙にレイシャは迷彩をかぶりなおしたのだろう、静希の視界には彼女は捉えられない、トランプで索敵は続けているがいずれその範囲外に逃げられてしまう単純な身体能力で勝てないのは承知の上、アイナは静希に勝つのではなく、静希の足止めをするために接近してきたのだ「この・・・離せ!」「離しません!絶対に!」静希は二人に負傷をさせることはできない、二人はそれを理解している無論強引に静希が引き離そうとすればそれもできるだろう、殴るなり傷つけるなりすればアイナを振りほどくこともできるだろう、だが静希にそれはできないそれを見越した作戦だった、強引すぎる、捨て身すぎる行動こそが最も安全であるという事であるそれに彼女のタックルはかなりいい場所に決まっている、油断すれば重心を崩されかねない、絶妙な位置に抱き着いているのだなるほど、エド達から最低限の近接戦闘の手ほどきは受けているという事だろうすでにレイシャは静希とかなり距離を離していた、今から接近してもチャージを済ませてしまうだろう迷彩を使用している状態で能力を発動されたら、静希のトランプによる索敵などは意味がなくなる、高速で移動し続け攻撃されれば静希とてどうなるかわかったものではない今レイシャがどのあたりにいるのか、すでにトランプの索敵は役に立っていない、それほど遠くにいるのだろう静希のトランプによる索敵が有効なのはせいぜい十メートル程度、トランプの数にも限界があるのだ、仕方がないと言えるだろうだが相手が能力を発動するのであればそれなりに手段はある静希はトランプの飛翔範囲を狭め、半径三メートル程までにする、広範囲に高速で飛翔させていたトランプの範囲を狭めたことで、静希の周囲の視界は一気に悪くなる、だがそれは逆に言えばトランプの飛翔範囲の外にいるレイシャから自分たちの姿を視認できなくする意味も込められていたすでにレイシャは身体能力の強化を終えているだろう、いつ突っ込んできても不思議はないだからこそ、静希はある仕掛けをしたレイシャの速度はすでに見た、あれが全力かどうかはわからないが反応できない速度ではない静希は体ごと動いてアイナを振り回し、力が緩んだ一瞬を見計らって思い切り地面に押し付けて拘束した「レイシャ!ここです!」アイナの叫びと同時に、トランプの中めがけてレイシャが突進したアイナの声を頼りにレイシャは突っ込んだ顔だけを迷彩からだし、トランプが大量に顕現している空間の中心めがけて思い切り蹴りを放つだがその蹴りは誰にもあたることはなかったそう、トランプの飛翔区域の中心に静希達はいない、静希はあえて中心点を自分たちからずらすことでレイシャの攻撃を回避していたそして静希は一瞬見えたレイシャの速度を確認した一度でだめならもう一度、レイシャは自分の身体能力強化に時間制限があることを知っている、せめてアイナだけでも助け出しておかなければこの後が厳しい、どうにかして静希を蹴り飛ばさなければと再びトランプの飛翔しているその中心へと突進していく先程よりも低く、高すぎたから外れたのではないかと思い、思い切り低い場所に蹴りをぶつけるために低空で突っ込んだ中心に蹴り込んだのにまた誰もいない、レイシャが何かおかしいと感じるよりも早く、静希の左腕がレイシャの着ていた迷彩を掴んだ唐突に迷彩をはぎ取られ、一瞬何が起こったのかもわからず体勢を崩し地面を数度転がり、その後すぐに体勢を整える飛翔しているトランプが徐々に集まっていき、静希はその姿を現したいくら身体能力を強化していようと、どのあたりにやってくるのか、そしてどの速度で突っ込んでくるのかが分かればそれに合わせるのは難しくはない一度目で見て、一度トランプで感じ取ったのだ、ほんの一瞬の余裕とはいえ雪奈の攻撃には劣る速度、静希の左腕ならギリギリ反応できる静希が目的としているのはあくまで迷彩を無力化する事、そうすればトランプでの索敵は必要ない静希の足元にはアイナが倒れている、静希に踏まれ体重をかけられているせいで身動きができないようだった女の子を踏むというのは正直静希も心が痛むが、これも仕方のないことだと割り切ることにした迷彩を奪われ、アイナも動けない、動けるのは自分だけ、身体能力強化も、残り時間もどれほど残っているかわからないそれに自分の速度に合わせて迷彩を奪われたという事実にレイシャは動揺していた今自分が突進して攻撃しても通じないのではないかという迷いが生まれているのだかといって何もしなければこのまま負けるだけだ、それはダメだ、エドがあれほど頑張って自分たちのためにこの機会を作ってくれたというのに、自分たちがそれを台無しにするわけにはいかないアイナもレイシャも僅かに目に涙を浮かべながらどうすればいいのか頭の中で考えていた小学生にはつらいなと思いながら静希は竹刀を構えてまっすぐにレイシャを見る、先程までの刃物のような殺気はむけず、レイシャめがけて視線だけを向けたこの程度で諦めるような鍛え方をエド達はしていないだろう、かかってこいそう言っているかのような瞳、レイシャもその変化に気付いたのか、涙をぬぐいながら静希の方を注視した「終了まであと一分!」城島の言葉にアイナとレイシャの表情が変わるあと一分で静希を倒さなければいけない、迷っている時間などは無い、そう判断したのかレイシャは全速力で静希めがけて突進するレイシャの蹴りが静希に直撃する寸前、アイナが全力でもがく足元で彼女がもがいたせいで静希は若干バランスを崩し、レイシャの蹴りを受け流せず竹刀で直接防御してしまう速度と筋力の両方が相まってか、静希の体はほんのわずかだが宙に浮く、そしてその隙をアイナは見逃さず脱出することに成功した二人が自由になったものの、状況は未だに不利、なにせ迷彩は静希に回収された、もう自分たちがもっている迷彩は無い後はこの体でできることをするしかない先程の蹴りでも静希にダメージは無い、竹刀で完璧に防御されてしまった、だが竹刀の破壊には成功している、竹刀はレイシャの蹴りを受けた部分でひしゃげるように曲がってしまっていた武器は破壊した、後は肉弾戦、これならまだやれるすでに一分を切った、時間は無い、アイナとレイシャは視線を合わせて再び行動を開始するレイシャがチャージをする間に、再びアイナが静希の動きを止めようと真っ直ぐ突っ込んでくる、先程と同じだ、チャージするための時間稼ぎをアイナが行うつもりなのだだがそう何度も静希も同じ手は食わない突っ込んでくるアイナを軽くいなし、その腕を掴んで拘束し盾代わりにする正面からの攻撃はアイナを盾代わりにして防ぐ、そうするとレイシャは後方、あるいは側面からの攻撃しかできなくなる静希の動体視力でどこまで確認できるかはわからないが、縦横無尽に走り回られるよりはましな状況になったと言えるだろうだがレイシャは動かないアイナを盾にとられているという状況を前にして動くことができなくなってしまっているようだったどうやら彼女には仲間を盾にされている状況では攻撃をするという選択肢を選ぶことはできないらしい優しい子だなと思っていると、城島が試合終了の合図を出すその瞬間、レイシャは膝から崩れ落ち、涙を流し始めたそしてそれは拘束を解除されたアイナも同様だった、全身の力を抜いて静かに涙を流し始めている誤字報告を五十件分受けたので六回分(旧ルールで十二回分)投稿多くの方々がまるで連携するかのようなタイミングで誤字報告をしてきました、おかげでこの様です・・・ありがたいんだけどね・・・これからもお楽しみいただければ幸いです

「うぅぅ・・・ごめ・・・ごめんなさいボス・・・」「うう・・・もう、申し訳ありま・・・せん・・・ボス・・・」今この場にいないエドに詫びているのだろう、アイナとレイシャは号泣してしまっている、まるで自分が泣かせてしまったようで静希は非常に困ってしまっていた二人はこれで留学の件がなかったことになると思っているのだろう、これはしっかりとフォローしなければいけない「大丈夫だよ二人とも、留学の件はこのくらいじゃなかったことにはならないから」「「・・・え?」」状況を理解できていないのか、二人は大粒の涙を流しながら静希の方を見るとりあえずこの泣き顔だけはやめさせないとなと、静希はポケットからハンカチを出して二人の顔を拭いていく「能力の制御率を見るためには、精神的な負荷をかけた状態にしなきゃいけないんだけど、二人とも優秀すぎて用意してたテストじゃ測れなかったんだ、だから嘘を吐いて俺と戦わせたんだよ」「嘘・・・?」「・・・じゃあ・・・留学は・・・?」たぶん大丈夫と静希が告げると、アイナとレイシャは大きく脱力する、恐らく安堵の割合が大きいのだろう、よかったと何度も繰り返しながら今度は嬉し涙をこぼしていた「こうしてみているとお前が泣かしたようにしか見えんな」「・・・実際に泣く原因を与えたのは先生でしょう?性格悪いですよ?」何のことやらと城島はすまし顔を浮かべているが、今回のことを進言したのは予想通り城島だ静希達の関係をほぼ正確に把握しているからこそ提案できたのだ、教師の中で静希達の状況を把握しているのは城島しかいないのだから彼女を疑うのは必然だ「で?いたいけな少女を泣かしたんですよ?それなりの結果は出たんですか?」「ん・・・ただ見せた時の能力発動より早く発動しているのが確認できた、レイシャの場合その分効果時間が短いようだったが、十分及第点だろう」あくまで私見だがなと告げると、二人は涙をぬぐいながらもハイタッチしている心理的な圧迫を受けてなお彼女たちは十分能力を制御できていた、その見解は城島だけではなく他の教師も同じだったようで比較的高評価を受けているようだったこれならば留学の件は問題なさそうだなと思う反面、静希は一つ気になったことがあった「ちなみに、戦略面ではどう思いました?随分しっかりと役割分担してるみたいでしたけど」「あぁ、それに関してはほんの少しだが私から助言をしておいたからな、お前は機動戦に弱いと」その言葉に静希はようやく納得する、道理で妙にレイシャの能力発動に固執していた訳だと確かにレイシャの身体能力強化は十分静希に通用する能力だ、機動力でかき回し、死角からの一撃を受ければ静希を行動不能にすることもできただろう無論それを静希が許すはずはないが「相手がお前だからこそ取れる手もあった、目くらましとタックルはいい対処だったと思うぞ、実戦では通用しないがな」練習試合だったからこそ役に立つ行動というのは存在する、今回のアイナの目くらましとタックルがそうだ、実戦では使い物にはならないが、条件付きの戦いだからこそ使える手というのはあるのだ例外的というか、ルールの外側を利用した良い手段と言えるだろう、エドが将来を楽しみにしているのも頷ける「・・・ミスターイガラシからしたら私たちの行動はどうでしたか?」「なかなか追いつめていたように思えますが、どうでしたでしょうか?」結果的には静希の勝利だったが、確かに武器破壊までされるとは思っていなかっただけに静希はあの時少しだけ焦っていたのだレイシャと肉弾戦になった時、左腕でいつまでも防御できたかは怪しいものである、だからこそアイナを人質兼盾代わりにしたのだ、まさかあそこで戦いが止まってしまうとは思っていなかったが「まぁ二人とも良くも悪くも正直だったな、俺が最初逃げ回ってもいいかって聞いた後、まったく警戒しなくなっただろ」「う・・・」「それは・・・」静希の言う通り、城島に先の質問をした後アイナとレイシャは静希が自分たちから逃げ回ってくれるのではないかと勝手に勘違いしたそして静希はその逆をついて一気に接近し二人の混乱を誘った、意図的に作り出した状況とはいえここまで簡単に決まるのも問題である「一時的にとはいえ敵対するんなら一挙一動を警戒しなきゃだめだ、事前に言うセリフなんて全部ブラフか混乱させるための罠くらいに思わなきゃだめだ」「で、ですがミスターはもう少し手加減してくれてもいいと思います」「そうです・・・腕とか結構痛かったです」実際に静希の竹刀を受け続けていたレイシャとしてはもう少し手心を加えてほしかったのだろう、不満そうにしているものの一応痣などはできていない、いくら静希が本気で竹刀を振っていたとはいえ最低限の加減はしていたのだ、無論気づかれない程度のレベルでいたいけな少女に傷を負わせたとあっては後でエドやカレンから何を言われるかわかったものではない、将来有望な子供をこんなところで傷物にするわけにはいかないのだ「おーい、二人とも大丈夫だった?」「アイナちゃんレイシャちゃん、怪我はない?」離れたところから見ていた明利と雪奈がやってくると、アイナとレイシャは二人に勢い良く抱き着く「痛いですミスミキハラ、ミスターイガラシにコテンパンにされました」「私なんて踏みつけられました、とても痛かったです」完全にウソ泣きだが、二人はいかにも自分たちが被害者であるという演技をしている明利も雪奈もそのことに気付いているようだが、あえて気づかぬふりをして二人をいたわっていた「おうおう可哀想に、お姉さんが癒してあげよう・・・まったく静、子供なんだから手加減位してあげなよ」「そうだよ静希君、二人ともまだ子供なんだから」「手加減ができるような状況じゃなかったのは二人とも分かってるだろ?・・・まぁ悪かったよ・・・」明利と雪奈を味方に引き入れられては静希としては逆らうことなどできない、これはアイナとレイシャの作戦勝ちだなと苦笑する中、城島が教師陣たちとの話し合いを終えこちらにやってくる「とりあえず能力面でのテストはこれで終わりだ、後は教師と保護者の話し合いで終わる、お前達は好きにしていろ」「了解です・・・お疲れ様だ、よく頑張ったな」静希はとりあえず二人の頭を撫でてやることにする、今日一日アイナとレイシャは本当によく頑張ったのだ、慣れないことをした上に、戦闘まですることになったのだから「まだまだお粗末ではあるけど、エドに胸張って報告しておけ、俺と戦って時間切れにまで持ち込んだんだ」「はい!行ってきます!」「了解です!」アイナとレイシャは自分の成果を報告するべく、エドたちのいる校舎へと走って行った自分と時間切れになるまで戦えた、多少言葉足らずではあるが事実には違いないエドが聞いたら驚くかもしれないなと思いながら静希達は二人の背中を見守っていた「あの子たち良い能力を持ってるよね、集団戦の方が得意な能力だ」「そうだね、いろいろできることもあるし、何より連携の方が得意みたいだし」二人の能力は良くも悪くも集団戦、あるいは他者と協力することでその真価を発揮するタイプの能力だアイナは自分だけではなく、仲間の身を隠すこともできるようになるうえに、武器等も透明化させられるだろう、能力自体は単純だができることの多いいい能力だレイシャはまだ準備などに時間がかかるとはいえ他人との連携、そして協力において効力を発揮するだろう、他者の身体能力も強化できるというのは大きな強みだまだまだその使い方は未熟ではあるものの、今後その力を伸ばしていけば優秀な能力者になれるのは間違いない今回は二人ともほぼ素手の状態で戦ったが、もし万全の装備を整えていたらどうなっていたか静希も分からない「あぁいう能力を見ると専用の装備とか作ってやりたくなるよな・・・特にアイナはそう言うのがあるとかなり強いだろ」「あー・・・確かにあの能力使われると相当厄介だよね、簡単に透明になれるんだもん」彼女が透明にできるものは無生物に限られる、その為に衣服で全身を包んでいればほぼ周囲の風景と同化できるのだフルフェイスのヘルメットと全身を覆う衣服があれば簡単に完全な迷彩を作れるというのと同義である「留学が決まったら鏡花ちゃんにお願いしてみようか?」「なんか鏡花に頼むっていうのもなぁ・・・素材は俺たちで集めておくか、レイシャの方は・・・装備でどうにかなるもんでもないよなぁ・・・」アイナと違いレイシャは本人の技量次第でどうにでもなる、武器を使うというのも一つの手ではあるがまずは自らの能力の扱い方を学ぶほかないそれから自分に合った武器や道具を選択していくのが一番いいのである身体能力を強化するタイプの能力は良くも悪くもできることが多い、選択肢が多い分どれを選択すればいいかは本人によって変わるのだしかもレイシャの場合他人にもその力を与えられる、選択肢は通常の強化系統の中でもむしろ多い方だと言えるだろう「明利とかも強化の力が若干入ってるよな?そう言う意味でなんか助言とかできないのか?」「私のは本当にちょっとしか入ってないよ?筋力の強化はできないもん・・・力を伝搬するときのポイントみたいなのはあるけど・・・本当の強化系統の人と感覚は違うと思うよ?」明利の能力は同調系統に加えわずかではあるが強化の力も含まれる、自己治癒能力を強化する事での治療を施しているのがそれにあたるのだが、明利の場合アイナのそれとは少々異なるようだったどの系統がメインになっているかによって能力の性質は大きく異なる、例えば水を操る能力があった時でもその性質は能力によって全く違うことがあるのだ発現によって水を発生させているのか、それとも水を念動力で操っているのか、水に力を付与しているのか、はたまた別の効果を使っているのか、能力によって特性は大きく変わる同じ系統の能力でも扱いが異なることも多く、その性質を正しく理解していないとアドバイスをするのは難しいのだ「明ちゃんは実月さんに結構アドバイスとかもらってたよね?同じ系統だとやっぱり感覚って同じだったりするの?」明利は陽太の姉である実月に同調などの手ほどきを受けたことがある、その際のアドバイスも今かなり参考にしているのだとか「私の能力と実月さんの能力は結構似てましたから、それに感覚としては同調系統は似ているところが多いですよ?」同調系統は自分以外の存在と自らの存在を同期させることにある、鏡花もわずかながらその力を有しているが、実際にそれを認識するのはかなり疲れるというのを聞いたことがある簡単に言えば脳に直接情報が流れ込むようなものだ、慣れていないと急激な情報の流入に酔ってしまうだろう同調系統に共通しているのは自分以外の存在と文字通り同調することにある、その為同調系統の能力は似通っている点が多く、助言がしやすいのが特徴でもある逆に共通点が少ないのが強化系統だ、どのような形で強化しているのか、そして強化するときの感覚などもすべて能力によって異なると言ってもいい例えば単純に身体能力を強化していると言っても様々な強化の方法がある純粋に筋力そのものを高めるものもあれば、別の力を使って力などを強くしているものもあるのだレイシャの能力はどちらかといえば後者に、明利の能力が有する強化は前者に分類されるだろう雪奈の能力にも意味合い的には強化の力が含まれているのだろうが、彼女自身はその能力をコントロールできないのだ、なにせ刃物の性能によって強化の度合いなども変質するため、そもそも操作するというものですらない陽太の能力も身体能力が高まっているように見えているが、実際には違うという事が最近判明している、メフィ達人外に言わせると存在を昇華させているのだとか石動の能力も血液の量に応じた強化が発生するが、こちらも強化のコントロールができているとは言い難いこうして考えてみると純粋な強化系統は静希達の周りにはいないのである「エドモンドさんは確か光学系だったよね?投影だったっけ?」「そう、だからアイナにもある程度アドバイスができるだろうけど・・・レイシャの方は大変だろうなぁ」「レイシャちゃんみたいな能力者って結構珍しいよね、他人にも強化ができるっていうのは特に」明利の言う通り、強化系統のほとんどは自身の身体能力などの強化がほとんどなのだ、他人も強化できる能力というのは案外珍しいのである重宝されるし、できることも多いがその分学ぶことも多い期待される分これからが大変だろうと静希達は少しだけ心配していた「ところで静、今回の戦いってどれくらい本気で戦ってた?」「・・・結構本気だったぞ?特にレイシャの能力を発動させたら厳しいのわかってたからな、とにかく能力を発動させないように気を付けてた」静希は基本的に強化系統が苦手である、城島の指摘通り多方向からの連続攻撃、ないし高速機動による攻撃が苦手なのだその為にとにかくレイシャの動きを封じるべく動いていた、アイナが大きめの布を使って身を隠すのを見ていたために彼女の布を奪い、レイシャに攻撃を与えれば問題はないと思っていただがやはりそのあたりはエドの指導を受けているからか、準備はぬかりなく進めていたようで予備の布も持ち合わせていたために一度完全に見失う結果となってしまった「いくら試験っていっても、子供相手なんだからもうちょっと手加減とかしてあげないとダメだよ、レイシャちゃんばっかり攻撃してたし」「それは仕方がないだろ、能力的にレイシャの方が危なかったんだし・・・まぁ実戦ではアイナの方を先に潰すべきなんだろうけど」身体能力強化と透明化の場合、厄介なのはむしろ後者である、静希は今回相手の能力を最初から把握していたからこそ対処できたが、まったく情報を知らない場合透明になる敵というのは厄介極まりない今回アイナは武器の類を持っていなかったが、あれでもし静希を拘束できるような武器や道具を持っていた場合優先順位を変えなければならなかっただろうこちらからは見えないのに向こうからはこちらを確認できているような状況になったら最悪だ、攻撃され放題もいいところであるそう言う意味では彼女には銃などでの攻撃を指導するべきだろう、見えないところからの射撃というのは脅威だ、その姿が見えないだけでかなり相手に圧迫感を与えることもできるし、隠密行動においては優位に進めることができる熊田と一緒に行動させたらかなり隠密性が高くなるだろう「ちなみに雪姉だったらどうやって戦った?」「そうだなぁ・・・私ならとりあえずアイナちゃんを抱き上げるかな、その後にレイシャちゃんに突貫」「・・・その心は?」「逃げ惑う姿を追いかけるのがいいんじゃないか」その回答に静希と明利はついため息をついてしまう、戦闘などのセオリーなどは完全に無視して自分のやりたいことをやっているようにしか思えないそしてアイナとレイシャを襲うことを前提としているあたり、あの二人と雪奈は近づけない方がいいのではないかと思えてしまう二人の方が雪奈のことを気に入っているためにそれは叶わないかもしれないが、一応頭の片隅に入れておいた方がよさそうだった「シズキか・・・二人が世話になったようだな」静希達がエドたちのいる校舎へと向かうと、そこにはカレンとアイナレイシャの姿があったどうやらエドは教室の中で教師たちと話し込んでいるようだ「世話になったっていうか・・・まぁこっちもいい経験ができたよ」「随分と痛めつけられたと言っていたが、多少の手心くらい加えてやってほしいものだがな」「お前もそれかよ・・・仕方ないだろ、露骨に手加減なんかしたら怒られるのこっちなんだから」カレンはそう言いつつも静希の事情は大まかに察しているのか、それは大変だなと薄く笑みを浮かべている試験である以上手を抜いたらアイナとレイシャが不利になるという事は静希にも十分わかっていた、だからこそ怪我をさせない以外の手は抜けなかったのであるついでに言えば城島に教育指導されたくないというのもあるのだが、それはまたおいておくことにしよう「ミスターイガラシは意地悪です、子供相手に本気を出していました」「ミスターイガラシは大人気ないです、いたいけな子供にあんなひどいことを」あの戦いが随分と根に持たれているようで二人は頬を膨らませて抗議している、確かに多少大人気なかったかもしれないがあれも必要なことだったというのはこの二人にはまだ理解できないのかもしれない普段の訓練とは違う、どちらかというなら実戦に近い互いのやり取りをして二人としても得るものは多かっただろうが、そのことを認識できるようになるまであとどれくらいかかるだろうか「二人とも、シズキを責めるのはやめろ・・・シズキはお前達のことを思って全力で戦ってくれたんだぞ、優しくするだけが指導ではないという事だ」「・・・ですが・・・」「・・・むぅ・・・」二人としてもカレンの言っていることが正しいという事はわかるのだろう、だがそれでも納得がいっていないという表情をしていた子供というのは難しいなと思いながら静希はどうしたものかと困った顔をしてしまう「私やエドでは良くも悪くもお前達に甘くなってしまうからな、そう言う意味ではシズキは正しくお前達に指導できる・・・無論厳しいだろうがな」エドやカレンは確かにアイナとレイシャに甘いように思える、普段一緒にいるということで多少情が湧いているのだろう、しっかりと訓練することはできても厳しく訓練することは苦手なようだった「どうだろうシズキ、この子たちが留学している間、二人を鍛えてやってくれないか?」「俺が?鍛えると言ってもできる事なんてたかが知れてるぞ」思わぬカレンの申し出に静希は若干難色を示していた、なにせ静希の言う通り教えられることなどたかが知れているのだ能力的なことではなく、どちらかといえば本人の技量的なものが多いためそれらが本当に必要になるかはわからないのである静希の場合自分に必要だと思われる技能を取得してきたが、それがこの二人にも必要かどうかはわからない、教えたことが完全に無駄になるかもしれないのだ「それで構わない、大事なのは甘さだけではなく厳しさを知ることだ、そしてそれが自らの糧になるという事を理解できればいい、今回の留学はいい機会だからな」「・・・まぁ俺が教えられるような事であれば教えるけど・・・」静希が教えられることと言えば隠密行動と剣術と射撃だろうか、隠密行動はさておき剣術は雪奈の方が得意だし射撃も明利の方が得意だ、自分が教えるような事だろうかと首をかしげてしまう個人的に二人に教えてやりたいことはいくつかある、実戦に使えるテクニックもあるが、それをこの二人が活用できるかは疑問である「ほほう・・・ならば私達もいろいろ教えてあげようじゃないか」「ミスミヤマがですか?それは嬉しいです!」「いろいろ優しく教えてください!」優しくという言葉を強調するあたり、厳しいのは嫌なのだろうか、アイナとレイシャは雪奈の方に飛びつくように抱き着いていたこの中で一番のスパルタが雪奈だという事も知らずにのんきなものである「シズキ・・・ミヤマの実力はいかほどだ?」「少なくとも前衛としての力は確かだよ、特に剣術は凄い、俺も教えてもらってるんだ」「ほう・・・それは頼りになる」雪奈の剣術は通常のそれとは異なり相手を殺すことに秀でた剣だ、速さもそうだがその鋭さは他の追随を許さないほどである静希は最近になってようやく雪奈の本気の攻撃を確実に防御できるようになってきてはいるが、それを連続で、移動しながらの攻撃だと若干運の要素が関わってくるこればかりは才能の問題なのだろう、静希が一年以上受けている指導でもこれが限界なのである「私の家にはそれなりに武器もあるからね、二人にぴったりの武器を見繕ってあげよう」「本当ですか?嬉しいです!」「本当ですか?ありがとうございます!」二人はもともと雪奈に懐いてはいたが、実際に訓練が始まった時にこの反応がどうなるかはわからない特に指導中の雪奈はかなり厳しい、そのことを二人が気付くのは一体いつになるだろうか「いやぁ・・・ようやく終わったよ・・・長かったぁ」その日の夜、エドはようやくすべての項目が終わったことで肩の荷を下ろしていたこれまで準備してきたことが今日でひと段落したのだ、未だ結果が出てないという事もあり達成感とまでは言えないものの、奇妙な充実感を得ているようだった「お疲れさん、後は結果次第か」「そうだね・・・あの子たちも頑張ったしそれほど悪い結果にはならないだろうけど・・・」「まるで娘の受験結果を待つ親の気分だな」静希が笑いながらそう言うとエドは茶化さないでくれよと笑って返すエドにとってアイナとレイシャは弟子であり社員であり娘のようなものなのだ、手塩にかけて育てているからこそ気分は親のようなものなのである「そうだシズキ、随分と二人に厳しく指導したそうじゃないか、二人がコテンパンにされたと言っていたよ」「あー・・・なんか根に持たれてるな・・・まぁあれだ、試験って形をとる以上仕方無くてな、そのあたりは許せ」「いやいや責めているわけじゃないんだ、あの子たちに厳しく何かを教えることができるっていうのは、今までヴァルしかいなかったからね、そう言う意味ではありがたいよ」カレンが言っていたようにどうやらエドたちは基本アイナとレイシャに甘いようだ無論しっかりと教えるべきことは教え、叱るべきところは叱っているのだろうが、それでもどうしても甘くなるらしいそう言う意味ではエドの契約している悪魔ヴァラファールは二人に厳しく接しているようだったそれにしてはアイナとレイシャに懐かれている、恐らくは厳しくも優しいおじいちゃん的ポジションなのだろう血のつながりのない数人がまるで家族のようなポジションにいるというのもなかなか奇妙な構図だ、エド達としてはその関係が心地いいのだろう「カレンからも言われたかもしれないけど、もし留学することになったらあの子たちにいろいろと指導してくれると助かるよ、僕たちじゃ教えられないこともあるからね」「お前もか・・・今回のことであの二人にちょっと苦手意識もたれたかもだからちょっと難しいかもな」静希はしっかりと全力で二人と対峙した、だがその事実がアイナとレイシャからしたら大人気なく見えたかもしれない子供相手にむきになって勝ちに行く姿、正直客観的に見ればあまり褒められるものではない理由があるのも理解できるし納得できる話だったかもしれないが、それにしてもあまりにも大人気なさすぎる姿だったのである「ハハハ、大丈夫だよシズキ、あの子たちだってバカじゃない、君が何故そうしなきゃいけなかったかくらいは理解してるさ、その上でちょっとした仕返しをしてるつもりなんだよ」「そうか?明らかに嫌われた感じなんだが・・・」「そうでもないさ、むしろ自分たち相手に本気を出してくれたって少し感謝してるかもしれないよ?」静希は近くで雪奈と戯れているアイナとレイシャの方に視線を向ける、シズキの視線に気づくことなく二人はたわむれ続けている、本当に嫌われていないのだろうかと静希は若干不安になっていた理由はどうあれ一か月近く一緒に住むかもしれないのだ、明利や雪奈がいるとはいえ嫌いな相手の所にいるのはストレスになるのではないかと思えてならない「ふふ・・・女の子が結構近くにいるシズキでも女心を理解するまでには至らないってことかな」「女心じゃなくて子供心って言ったほうが正しくないか?小学生相手に女も何もないだろ」「ハッハッハ、その考えは間違っているよ、女の子というのは年齢問わず女の子なのさ、子供である以上に女性としての心も持ち合わせているんだよ」自分よりも年上で、なおかつあの二人を育てているエドがこういうのだきっと何か実体験から学んだものなのだろうが静希からすると首をかしげてしまう東雲姉妹と訓練したりしている時もそうだが、子供が遊んでほしいという感情以外のものは感じないのだ慕ってくれていることはわかる、それが淡い恋心に発展しかけているというのも理解できるだがどうにも子供特有の恋に恋するという恋愛ごっこの類にしか思えないのだ「シズキの身近には小さな女の子はいないのかい?そういう子にいろいろ聞いてみるといいよ」小さな女の子その言葉に静希は真っ先に明利の姿が思い浮かび、台所にいる明利の方に視線を向けるがエドの言っている小さい子というのは身長的な意味ではなく年齢的な意味での話だろう身近にいる小さな子供というと東雲姉妹が浮かぶが、彼女たちに女心の何たるかを聞くとまず間違いなく石動にも話が通る石動に話が通ると妙にこじれる可能性がある、東雲姉妹以外に誰かいないものかと考えていると、先日勝手に日本までやってきたセラが思い浮かぶ彼女は普通の女性とは明らかに違う、というか彼女は年齢の割に精神が幼い今までしっかりと指導されてこなかったというのもあるのだろうが、妙に子供っぽいところがある、そう言う意味では東雲姉妹より幼く見えるほどだ身体的特徴で言えば一番大人に見えるのにもかかわらず一番子供っぽいというのも考え物である誤字報告を15件分受けたので2.5回分(旧ルールで五回分)投稿現在総合評価ポイントが10,000を越えました、このお祝いは誤字がスッキリしたらやろうと思います、本当にありがたい限りですこれからも拙い話と文章ではありますが、お楽しみいただければ幸いです

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「みんな、ごはんできたよ」「ほら、アイナとレイシャも遊んでないで椅子に座れ」料理を作っていた明利とカレンがテーブルに夕食を運んでくる、人数が多いからかなりの量になっているが、この量をさっさと作ってしまうあたりさすがというべきか、二人の料理の腕の高さがうかがえる「ボス、今日この後ミスミヤマに稽古をつけていただけることになりました」「なんでも刃物の指南だそうです!楽しみです」楽しそうにエドに報告する二人を見て静希は雪奈の方に視線を向ける、静希の視線に雪奈は親指を立てているが、別によくやったとかグッジョブとかそう言う類の視線ではない静希が向けたのは『本当にこの二人に指導なんてして大丈夫かよ』という心配の視線だ「へぇ、悪いねユキナ、変なことを頼んじゃって」「いやいや、この子たちに刃物の扱いを教えるのはなかなか楽しみだし気にしなくていいですよ、やってあげたいこともあるし」雪奈の指導なら大丈夫と思っているのか、エドとカレンは何の心配もしていないようだったが、雪奈の指導を受けたことがある静希と明利は不安そうにしているなにせ彼女は静希以上にスパルタだ、そんな指導にアイナとレイシャがついていけるか不安なのである「雪姉、一応言っておくけど、こいつらは子供なんだから加減しろよ?」「うん?大丈夫大丈夫、トラウマになるようなことはしないさ、きちんと教えるから大丈夫」そのきちんと教えるという事が不安の原因なのだが、雪奈はそのことに気付いているだろうか刃を扱うことの大切さを教えるのが雪奈の指導の始まりだ、まずは自らがどのような力を持つのかを理解させる、その為に一番手っ取り早いのが自らの体を自分の手で傷つけることだ痛みと純粋な恐怖を与える、これほど正しい指導は無い自らが得た経験程有用なものはない、雪奈の指導は正しい、だからこそ怖いのだ「だったら雪奈さんと静希君の訓練の風景をまずは見せるといいんじゃないかな?どんなものかわかるだろうし」「あー・・・見稽古か・・・まぁそれでもいいかもだけど・・・」まずはアイナとレイシャに雪奈との訓練の恐ろしさを見てもらったほうがいい、それによってエドやカレンも意見を変えるかもしれないのだ自分たちがどれだけ危険なことをやらせようとしているかをわからせた方がいい「えー・・・ミスターイガラシは普段からミスミヤマと一緒にいるのですから今日は私達に譲ってくれても・・・」「そうです、独り占め良くないです」アイナとレイシャは頬を膨らませながら不満を述べる、先程までノリノリだっただけにその勢いを止められて面白くないようだったどう説明したものか、口で説明したところでわかりっこない、エドに視線を向けて助け舟を求めると、エドもその視線の意味を理解したのか、小さくうなずいてアイナとレイシャを呼ぶ「二人とも、シズキは普段から彼女と稽古してるんだ、つまり君たちの目標になるんだよ、なら訓練を始める前にその姿を見ておいた方がいい、実際に見ているかどうかで訓練の練度も変わってくるだろうさ」エドの言葉にアイナとレイシャは渋々納得した様だったエドの言っていることは正しい、どんな努力にもゴールや目標、目的があるかないかでその過程やモチベーションが異なるのだ延々と走り続けなければいけないというものよりも、ゴールが最初から設定されている方が気持ちも持つ静希は一年以上、ほぼ毎日雪奈と訓練を重ねてきた、これから稽古をしてもらう二人にとっては未来の自分となりえるかもしれない姿なのだ、見ておいて損はない「アイナ、レイシャ・・・お前達は今日シズキに本気を出されたと言っていたな」不意にカレンがそう告げたことでアイナとレイシャは同時に頷く、静希自身あの場では本気を出したと思っている、子供相手とはいえ自分にできる最良を尽くしたつもりだ「しっかりとシズキが加減をしてくれていたというのが訓練でわかるかもしれんぞ、シズキの姿は見ておいて損はない」静希がどれだけの訓練を重ねてきたか、どれだけ努力してきたか、実際に戦ったカレンはその片鱗を垣間見ているその危険性も、その実力もこの中で誰よりも知っているつもりだったなにせあの殺意を本気で、直接向けられたのはこの中でカレンだけなのだから「シズキ、ユキナ、いつも通りの訓練の姿を二人に見せてやってほしい、変に気づかいをする必要はないからな」カレンの言葉に雪奈はどうしようかという視線を静希に向けている、どうやら多少加減をする予定だったのだろう、自分の本気を見たらどんな反応をするか雪奈もある程度は理解していたようだ保護者代わりの人間がこういっているのだ、静希達としてはいつも通りの訓練をすればいい、それ以外にできることはなさそうだと静希はため息をついて返す「ミスミキハラ、お二人の訓練はそんなにすごいのですか?」「ん・・・そうだね、すごいと言えばすごいかな・・・」「そうなのですか・・・楽しみです」明利の言葉にアイナとレイシャは目を輝かせている、それほど素晴らしい訓練なのだろうと思っているのかもしれないが実際は違うあれは一見すればただの殺し合いだ、雪奈も刃が届くほんの数ミリまでは切るつもりで剣を振っている、本当に殺し合いをしているようにしか見えない訓練なのである静希達は夕食を食べ終えた後、訓練をするためにマンションの屋上へとやってきていた軽く準備運動を終えた後静希はオルビアを、雪奈は西洋剣を構える「どうしよっか、ギャラリーもいるけど、ちょっと気合い入れていく?」「いつも通りでいいだろ、変に気負うと怪我するぞ」「へぇ・・・言うようになったね静」一年以上も雪奈の剣を受け続けてきたのだ、多少なりとも静希の中に自信も芽生えている今はもう雪奈の攻撃よりも遅い近接攻撃は当たる気がしない、だが雪奈の本気は未だに静希の命を脅かすのに余りあるほどの速度と威力を秘めているのだ気を抜けばやられるのはこっち、そしてそれは雪奈も同じ未だ完全な防御ができないにしろ、静希の実力は徐々に上がってきている、時折雪奈に対して的確な反撃ができる程度にはまだオルビアの実力にも及ばないが、少しずつ静希も強くなっている、いつか雪奈に一撃を与えることができるようになるのも、遠い未来ではないだろう一体どんな訓練をするのだろうとアイナとレイシャは目を輝かせていたが、その目の輝きはすぐに失われることになる静希と雪奈からほぼ同時に刺すような殺気が放たれる、どちらも鋭い刃物を連想させる、近くにいるだけで切り裂かれるのではないかと思えるほどの殺気だったカレンやアイナとレイシャはそれを感じたことがある、カレンは静希と対峙した時に、アイナとレイシャは今日静希と試合をした時に静希の殺気の根源を見た三人は、僅かに冷や汗をかいていたそして次の瞬間、何の合図もなく雪奈が静希めがけて斬りかかり、静希はそれを難なく防御していた夜も遅く、近くにある光源は限られている、月の光と僅かな蛍光灯がある中で静希と雪奈は剣を振い続けるいや正確に言うのであれば雪奈が攻撃をし続け、静希がそれを防ぎ続けると言ったほうがいいだろう金属音が辺りに響く中、その場にいる全員が二人の訓練をその目に収めていた雪奈が剣を振る度に静希はそれを防ぎ、受け流し、躱し、次の攻撃に備える雪奈が体を使って攻撃するたびに静希はそれを見切り、受け止め、避け、距離をとる時に静希は雪奈めがけて剣を振うが、その剣は雪奈に掠る事すらない、剣で防御すらせずに体を柔軟に動かして容易によけていく速いその一挙一動を見る中で、エドもカレンも、アイナもレイシャもその速度に驚いていた雪奈はもともと前衛だ、剣を振う事に長けており、その攻撃をほとんど考えずに本能で行っているだろうだが静希はもとより中衛の人間だ、あれだけ高速で繰り出される攻撃をほぼ確実に、さらに最適な方法で防いでいる雪奈が繰り出す剣撃はほぼランダム、静希の防御の構えがあろうとなかろうとその時の気分次第でどの場所に飛んでくるかわからない本来ならば見てから反応できるはずはない、だが静希は雪奈の初動や視線の動き、さらに雪奈の癖などを見たうえで自分の処理能力の全てを使って雪奈の攻撃を防いでいた判断の速さ、処理能力の速さ、そう言ったものが雪奈の訓練で培われているのである少しでも迷えば雪奈の剣撃は静希の体に届き、その命を断ち切るだろう、だからこそ迷いなく最善を尽くし続ける必要がある他に考えることなどない、一つの事だけに集中できる状況だからこそこれほどまでの対応ができているが、これが実戦で他に注意を向けていたらこうはいかないだろう剣で、拳で、蹴りで、雪奈の繰り出す様々な攻撃を静希は防ぎ続ける、生半可な集中力ではない、一瞬でも気を抜けば首をおとされる、そう錯覚させるほどの殺気と剣技そしてそれは雪奈も同じだった自分の攻撃を防ぎ続ける静希、もし自分が一瞬でも気を抜けば反撃の刃を放ってくるだろう、自らの放つ攻撃を防ぎながら、虎視眈々とその機会を待っているのだ一年前からは想像できない、昔の静希からは想像できないその姿に、雪奈は心から嬉しく思っていた努力の結晶ともいうべき静希の技量、身近に雪奈という剣の達人がいたからこそ、静希はここまで剣技を身に着けたと言えるだろうだからこそまだ勝たせるわけにはいかない、自分はまだ教えなければいけないことが山ほどあるのだから静希の反撃の刃が襲い掛かる中、雪奈は薄く笑い全力で体を動かす先程とは打って変わるその速度に静希は理解する、本気の一撃が来ると雪奈が剣撃の中に時折混ぜる本気の一撃、静希も最近ようやくまともに防げるようになった、見てから反応することが困難な速度の一撃それを察した瞬間に静希はすべての思考を防御の方向へと向ける、どこからくるか、どの角度で来るか、どのタイミングで来るか、どう防御すればいいか受け流すべきか避けるべきか受け止めるべきか、頭の中で高速で対応を思い浮かべた瞬間、それは襲い掛かる空気を斬る音という表現が、一番正しかっただろう、周囲にある空気をまさに文字通り斬り裂くような斬撃が静希めがけて放たれる静希はオルビアと自分の左腕を盾にするように十字に構えその剣撃を真正面から受け止める金属音と共に静希の体は後方へと弾かれ、僅かに体勢を崩す中、二撃目が放たれた体勢を崩している状態でまともな防御などできるはずもなく、静希は何とか避けようとしたが間に合わず、肩口に剣を寸止めされる形で雪奈の剣は止まっていた「一回死亡・・・さすがに二撃連続は防ぎきれないかな」静希と雪奈が静かに息をつく中、それを見ていた全員が僅かに声を漏らしていた「いやぁ・・・実際に見てみるとすごいね、まるで侍みたいだ、持ってるのは西洋剣だけど」静希と雪奈の動きが止まり、その殺気が収まったのをきっかけに一度区切りがついたのを感じ取ったのか、エドは拍手しながら静希と雪奈の両方を称賛していた静希と雪奈はそれぞれ大きく息をついて一度訓練を中断することにする、普段ならこの状態を何度も何度も繰り返していくのだが、今はギャラリーもいる、ある程度説明することも必要だろう「普段からあんな訓練をしているのかい?あれは結構きついだろう」「きついなんてもんじゃないよ、一歩間違えれば大怪我するからな、集中力高めないと危なくて危なくて」実際静希は雪奈の攻撃をまともに受けられるようになるまでかなり時間がかかったのだ一日の訓練で死亡した回数は二桁では足りないかもしれない、最近になってようやく一日の死亡回数が二桁に届かない日があるくらいなのだ「どうだった?アイナ、レイシャ、君たちの目標の姿は」話を振られたアイナとレイシャは放心しているようだった、静希と雪奈の訓練を見てどう反応したらいいものか、頭の中で処理がしきれなくなったのだろうなにせ目で追うのが精一杯だったのだ、時にはどうやって動いているのか目で追いきれないところもあったあれを自分たちがやるのかそう思ったときに体が震えたのだ「あ・・・えと・・・ミスミヤマ・・・私たちもミスターイガラシと同じように訓練するのですか?」「あれだけの速度だと・・・私達ではその・・・訓練にならないかと・・・」恐らく二人が感じている不安は、静希と同じような速度で同じような技術を求められていると思ったのだろう、近接戦闘における最低限の手ほどきは受けているがあれだけの速度での戦闘は彼女たちにはできないレイシャの身体能力強化を行えばぎりぎりついていけるかもしれないが、それでは意味がないことは彼女たち自身理解していた「安心してよ、最初からそんなにハイレベルなことはやらないから、最初はナイフの扱い方、そこから徐々に自分たちにあった武器を使わせていく感じかな」最初はナイフ、もっとも扱いやすい刃物であり、格闘戦とも併用できる刃物であるナイフから訓練を始め、徐々にそれぞれの特性や才能などを見極めた後でそれぞれに武器を渡し、訓練を本格的にさせていく一ヶ月もあれば最低限のところまでは仕込めるだろうと雪奈は考えていた、実際それができるかどうかは疑問だが「ユキナ、一つ確認するが、一応怪我などはさせないのだな?それだけが心配で・・・」「あぁ、それに関しては問題ないよ、血を流させるのは一回だけだから」一回だけその言葉に安心すればいいのか、それとも不安になればいいのか困るところではあるがエドとカレンは僅かに眉をひそめていたなにせ公然と傷をつける宣言をしたのだ、これを簡単に許容できるはずもない「一応聞いておきたいが、何故そんなことを?血を流すのは少ない方がいいと思うが」「いいやダメ、自分がどんな力を持つのかを知っておかないと、その大切さもその怖さも理解できないからね・・・なんなら今やっちゃおうか」静、ナイフ貸してと雪奈が告げると静希はトランプの中から二本のナイフを取り出して雪奈に渡す両方とも投擲にも近接戦闘にも使える便利なナイフだ、どちらも源蔵が作ったナイフである「な・・・何をするのですか?」「い、痛いのは嫌です・・・」雪奈は嫌がる二人にナイフを一本ずつ持たせ、明利に一瞬視線を向ける血を流してしまった後はすぐに治してくれるようにという示唆だったようだ、明利はその意図を察したのか小さくうなずく「二人とも、刃物は銃と違って扱う人の技量によって実力が変わるんだ、自分が持つ力がどんな意味を持つか、それを知らなきゃいけない」雪奈が指導するうえで必ずやってきたこと、刃の痛さと恐ろしさ、それを知らないものに刃を握る資格は無い、これは雪奈の持論だ、自分がそう言う能力を持っているからこそ、この考えが正しいと信じていた「自分の体のどこでもいいからそのナイフで傷をつけてごらん、どれくらい痛いか、どれくらい怖いか、実感できると思うよ」静希や雪奈がもつ剣の半分どころではない短さの刃物、包丁のそれに近い長さの本当にただのナイフ普段なら手軽にもてたのだろう、だが自分の体を傷つけてみろと言われると途端に手が震える当然だ、自分の体を傷つけるのなんて初めてなのだからアイナとレイシャはエドに助け舟を求めるが、雪奈が言っている言葉の正しさを感じ取ったのか、二人の目を優しく見つめるばかりだ無理ならやらなくてもいい、だができるのなら、そう言う気持ちが含まれた瞳だ誰かにやってもらうのではなく、自分がやることに意味がある、その恐怖を越え、痛みを覚えて初めて刃の怖さを知ることができるのだ雪奈に指導を受けたすべての人間が通ってきた通過儀礼のような、教育の第一段階アイナとレイシャは若干涙を浮かべながらゆっくりと自分たちの手にナイフを押し当てた二人の手のひらから血が垂れる中、雪奈は二人の頭をやさしくなでる、そしてすぐ後ろにいた明利が能力を発動して二人の傷を治していった「怖かったでしょ?痛かったでしょ?それが刃物が与える恐怖と痛み、それを忘れないようにね、これから訓練していくうえで絶対に必要なことだから」何で自分の手を自分で傷つけなければいけないのか理解できないアイナとレイシャは涙目になりながら先程まで自分の手にあった傷の痛みを思い出していた子供には少々刺激が強すぎる指導だ、小学生にやらせていいものではない「ミスミヤマ・・・これは何の意味があったんですか?」「痛かったですけど・・・それはわかりましたけど・・・」ただ痛いだけだったのではないかと思ってしまっているようで、アイナとレイシャは雪奈に非難の目を向けているだがこれもしっかりと意味があることだ、二人が雪奈に指導を受けるなら知らなければいけないことである「二人は今刃物の痛みを知ったよね?これから私が指導をするわけだけど・・・今の痛みと怖さをどこかの誰かに与えるんだってことを意識しててほしいんだ、それだけ危ないものを扱うんだってことをしっかり覚えていてほしいのだよ」刃物を扱う上で必要な、武器を扱う上で知っておかなければいけない知識、自分が今危険な道具を扱っているのだという自覚が重要なのだ雪奈が教えてきた全員に指導し、理解させた痛み、これがあるか否かで上達にも大きく違いが出る、それがいい意味か悪い意味かは結果が出てみないとわからないが刃物が怖いという認識があるからこそ、防御に対して真剣になれる、逆に攻撃の時にはあの痛みを与えるのだという自覚をしっかりと脳裏に焼き付けることができる罪悪感というわけではないが、何かを傷つけることに対して無頓着ではいけないのだ道徳の授業にも近いかもしれない独特の内容に、アイナとレイシャは自分の手にあった痛みを思い出すように手のひらを見つめていた雪奈がなぜ自分たちにあのようなことをさせたのか、その意味を理解したからでもある「さぁそれじゃあ本番といこうか、静、もう一本ナイフ貸して」「はいはい・・・もう実践するのか?」「早い方がいいでしょ、こういうのは口で言うより実際にやらせたほうが早いもん」静希は雪奈にナイフを一本手渡す、すると雪奈は二人から少し距離をとって腰を軽く落して構える「さぁおいで、巻き込むといけないから一人ずつね、そのナイフで自由に攻撃してご覧?」攻撃の見本も何も教えていない状況で唐突に始まった指南に二人は少し戸惑っているようだったなにせ先ほどの痛みの記憶がまだ手のひらに宿っている、あれを雪奈に与えてしまったら、そしてあれをもし体で受けてしまったら二人の体は硬直とまではいかないまでも随分とぎこちなくなってしまい、動きにくそうにしていた「で、では・・・いきます!」まずはアイナがナイフを握って思い切り振りかぶる、剣道などで見る上段の振り下ろしの動きに似ているナイフの大振り、そんなものを雪奈が当たってくれるはずもなく、軽くナイフの切っ先を受け流し、ナイフをアイナの首筋にそっと添える「はいこれで一回死亡、一回死亡したら交代にしようか」まさか一撃で終わってしまうとは思っていなかったようで、アイナは安堵したような、少し悔しいような複雑な表情をしていた「い、いきます!」続いてレイシャだ、彼女は身体能力強化という体を使う能力を持っているために、剣術よりは拳を握るような要領で構えていたタイミングを計り雪奈めがけて突きを繰り出すと、雪奈は先程と同じようにナイフの切っ先を受け流し、腕をからめとった後でナイフをレイシャの首筋に添える「はい一回死亡、さぁどんどん行くよ」雪奈の指導の中で必ずあるのが死亡カウントだ、その訓練でどれだけ死んだか、どんな死に方をしたか、先程の傷の痛みを連想させることでさらに緊迫感を植え付けるそうすることで一回一回死亡するごとに自分のどこがダメだったのか、なぜこうなったのかを学習させるのだ特に二人の攻撃は隙も大きく、静希でも簡単に対応できるようなものばかり二人のナイフの使い方の特性を理解したうえでそれぞれにあっている使い方をさせるようで、雪奈は二人にはそれぞれ別の対応をしているようだった「シズキ、あれ見てると随分危なっかしそうに見えるけど・・・あれでいいのかい?」「ん・・・まぁあの人は刃物に関しては専門家だから大丈夫だよ・・・一見危なく見えるかもしれないけどな、後はあの二人がどれだけ雪姉の動きを学べるかだな」雪奈の指導は基本二種類に分かれる、直接見せる指導と、やらせる指導、今回は二つとも実践するつもりだった目の前でナイフの使い方を見せ、常に実践させる、静希もそうしてきたように比較的上達が早いのがこの方法なのだ一回死亡するごとにアイナとレイシャのナイフの振りは鋭く、隙も少なくなっていくまだほとんど素人に毛が生えた程度のものだが、少しずつではあるが確実に上達しているのは事実だかつて死亡しまくっていた頃を思い出している静希はしみじみとその光景を眺めていたあのように死亡していた頃が懐かしいと思っていると、静希の前にアイナとレイシャがやってくる誤字報告を十件分受けたので二回分(旧ルールで四回分)投稿これからもお楽しみいただければ幸いです

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「ミスターイガラシ、ナイフのお手本を見せてください!」「ミスターイガラシ、ミスミヤマに挑戦してください!」二人のナイフを渡され、静希は頭を下げられる、先程までの見本は剣でのものだったために参考にはならないという事だろうか雪奈の方を見るとニヤニヤと笑みを浮かべナイフを手で遊んでいる「・・・お前らの参考にはならないかもしれないけど・・・」「「構いません」」どうやら二人の頼みを断るのは難しそうだと静希はナイフを一本だけ借りて雪奈の前に対峙する「なんか前にも同じことなかったか?」「あぁそうだね・・・前は鏡花ちゃんに教えてる時だったか」去年雪奈が鏡花と石動に似たような指導を行ったときも静希がナイフでの戦いの見本を見せたものだ当時よりは上達していると思いたいが、剣とナイフでは体の使い方が全く異なる、自分がどこまで反応できるようになっているかを確かめるいい機会かもしれないが、それでも気を引き締めなくてはならないだろうまず気を付けるのは間合いだ、剣と違って拳や蹴りも容易に届く距離、注意を向けるべきはナイフもそうだが体術も含まれる静希は徒手空拳がお世辞にも得意とは言えない、授業で最低限の手ほどきを受けた程度の実力しかないために、殴る蹴るの応対は不得手だだがナイフの攻防であれば剣で培った経験値がある、多少は対応できるのである静希はナイフを構えてゆっくりと息を整え集中していく何時雪奈のナイフが襲い掛かってきても不思議はない、静希は全神経を研ぎ澄まして雪奈の全身の動きを見極めていた次の瞬間、雪奈のナイフが静希の顔めがけて突き出される、明らかに寸止めなどするつもりがない全力の突きを、静希は顔をほんの少し横に傾けて回避する髪の毛が数本切れてゆっくり落下していくがそこで雪奈の攻撃は終わらない、突き出されたナイフをそのまま横薙に振るい攻撃する、だが静希は腰を落とし頭を低くすることでその攻撃も回避して見せた今度はこちらの番だというかのように、静希はナイフを下から切り上げるように雪奈めがけて振るう胴体めがけて放たれたナイフは、雪奈の片腕に簡単に止められてしまう、瞬間、先程雪奈が振りぬいたナイフが再び静希めがけて襲い掛かる静希は若干体勢を崩しながらも後方にのけぞる形でナイフを回避し、胴体に蹴りを当てる形で強引に雪奈と距離を作る「いったた・・・女の子を蹴るなんて随分とひどいじゃないか」「そっちこそ、さっきの避けなかったら殺す気だったろ」「避けるってわかってたからね、そのあたりは信頼の証さ」静希と雪奈は互いに笑みを浮かべながら再びナイフを交差させる、ナイフだけではなく体も使っての攻防にアイナとレイシャは目を奪われていた静希の動きは先程の剣を使っていた時のそれと比べると多少鈍く、ぎこちなさが残っている、だがそれでも雪奈の攻撃に反応できているように見えた雪奈の攻撃は遅くない、自分達では目で追う事も難しいのではと思えるほどの速度だだがそれらを静希はすべて反応している、回避し、ナイフで弾き、体で強引に止める、どれもアイナとレイシャがまだできそうにない動きだった自分たちが使っているナイフと同じなのにあそこまで違う動きができる、それは静希が積み重ねた努力の結果だ剣での訓練を続けてきた静希にとってどうしてもナイフの扱いは剣に劣る、だがそれでも刃を扱う事には変わりない互いに殺気を混ぜた視線とナイフを振るう中、エドとカレンは感心してしまっていた「すごいね・・・ユキナと訓練するとみんなあんなふうになれるのかい?」「雪奈さんと毎日訓練してるのは静希君だけですから難しいかと・・・昔私も訓練してもらってましたけど、才能無くて・・・」明利も静希や陽太と同じように雪奈にナイフの指導を受けたことがある、投擲や近接戦闘において明利はそこまでの才能がなく、かなり苦労していた覚えがある最低限の技術を受けたところで明利は訓練を止めてしまったのだ「毎日か・・・あれを毎日となると結構きついかもね・・・」「見ているだけで神経をすり減らしそうだ、本人たちの消耗はかなりのものだろうな」見方を変えれば組み手を行っているようにも見えるが、その手に握られている刃物があるという事実が二人の緊張の度合いを一気に上げているただの組手から殺し合いにランクアップしてしまっているために肉体的な疲労だけではなく、精神的な疲労もかなり蓄積しているとみて間違いないそしてそれは正しい、先程の剣の訓練に加えて不慣れなナイフでのそれに静希は高い集中を維持することを余儀なくされている一歩間違えば大怪我に繋がるという緊張感が静希の全力を引き出している、命の危険がない状況で行う訓練と、自らの命がかかっている実戦に近い形の訓練では蓄積される経験値が段違いなのだまるで踊っているように見える二人の動きが止まったのは、ナイフを互いに突き出した時だった静希の突き出すナイフは避けられ、雪奈の突き出したナイフが静希の喉に寸止めされている、どうやら決着がついたようだった決着がついたと理解した瞬間、静希は大きく深呼吸して緊張を解いた、今までの疲労が一気に体に襲い掛かる中、エドたちが拍手をして静希の健闘をたたえていた「すごいね、二人のそれとは全く違う、やっぱり日々の訓練ってのは大事だね」「そりゃどうも・・・慣れてないからナイフは使いたくないんだけどな・・・」静希は基本ナイフを使う時大抵投擲にしか使わない、自分の体を使ってナイフを扱うというのはあまりないのである「さぁさぁ二人とも、静の動き見てたでしょ?自分がどんな動きをすればいいかしっかり考えてかかってきなさい!」アイナとレイシャも先程の静希の姿に触発されたのか、ナイフを片手にやる気を出しているようだった静希の技術のほとんどは自らの努力によって培われたものだ、よって努力さえすれば大概の人間は手に入るものである特に静希はこれと言って剣術などの才能は無い、射撃の才能もそこまでないために、今まで努力によってこれらの技術を修得してきた、だからこそアイナとレイシャも頑張ればあれくらいできるようになるのかもしれないと思ったのである「シズキ、君たちはあれを毎日やっているのか?」「まぁな、お互いの都合がつかない日以外は毎日やってるよ、まぁ都合がつかないのなんて実習の日とかくらいだけどな」静希と雪奈の都合がつかない日というのは実際ほとんどない、なにせ雪奈はほぼ毎日静希の家に遊びに行っているのだ毎日のように静希の家に行き、静希の訓練をして帰るという毎日を送っているのである「あれだけの訓練を毎日していれば上達するのも頷ける・・・うちのボスにも見習ってほしいものだ」カレンの言葉にエドはひきつった笑みを浮かべる、どうやらエドは毎日訓練をするという事が苦手なようだった普段仕事をしているからという事もあるのだろう、毎日訓練をするというのは少々酷な気もする「カレンはどうなんだ?普段は訓練を良くしてるって聞いたけど」「ふむ・・・私の場合能力を使えない状況にあるからな、どうしても肉体に頼らざるを得ない・・・特に射撃などはよく訓練しているぞ」カレンは彼女の使い魔である弟のリットの関係から、余分な魔素を欠片も使えないような状態になってしまっている、その為満足に能力を使うことができないのだだからこそ能力ではなく、自らの技術で状況を乗り切るしかない、射撃などに重点を置いて訓練しているようだ「あの二人に銃は教えてないのか?」「幼いころから銃を教えるというのは憚られてな・・・もう少し能力もしっかり使えるようになってから指導するつもりではあるが・・・」二人の能力を考えるとナイフや銃などとの相性はそれなりに良い、特にアイナに関していえば透明化の能力を使えば見えない武器による投擲や射撃攻撃ができるのだ今のうちにナイフの投擲だけでも教えておいて損はないかもしれない「雪姉、ちょっといいか」「ん?なに?」アイナの攻撃を軽く躱しながら雪奈は静希の方に目を向ける静希は雪奈めがけて投擲処理のされていたナイフを射出すると、彼女はそれを難なく受け止めたそしてその意味を理解したのだろう、なるほどねと言って二本のナイフをアイナとレイシャに渡すいろいろと手ほどきをしているようで、ナイフのスイングの仕方などを教え込んでいた「ナイフの投擲か・・・なるほど、二人の能力との相性もよさそうだ」「透明化に身体能力強化、身に着けておけばそれなりに武器になるだろうからな・・・どうせならもっと大きなものを投げさせてもいいかもな」静希は頭の中で将来二人が大きくなった時の戦い方についてシミュレーションしていた物質を透明化させるアイナに、自らと他者に身体能力強化を施せるレイシャこの二人が組んで戦えばかなり強い、見えない攻撃というのははっきり言ってかなり厄介なのだただ投げられたナイフも、見えない状態で放たれると静希も避けることはできない、しかも彼女自身が透明になっていた場合、音などがしない限りそこに人がいると気づきようがないのだそれこそ熊田のような音による索敵を行わなくては見つけることも難しいそれに加えてレイシャが強化の能力を使っていたらもう手が付けられない、ただの不意打ちではなくヒット&アウェイがより容易になる、なにせ相手から視認できないというのはかなりのアドバンテージになるのだ銃などの音が出たり発光するものと違い、ナイフなどは音も光も放たない、一度扱えるようになればかなり強いのは言うまでもない二人があこがれていた忍者ではないが、そう言った行動もできるようになるだろう以前源蔵のところである程度指導されていたからか、アイナとレイシャは投擲用のナイフを上手く扱えているようだった、これならあのナイフを使えるようになるまで時間はかからないだろう「ところでエドって銃とかナイフとか使ってるところ見たことないけど、お前ってなんか武器使えるのか?」その言葉にエドは表情を変えずにゆっくりと視線を逸らす、その様子を見てカレンは小さくため息を吐いた「うちのボスは残念ながらそう言ったスキルがからきしでな・・・ある程度扱えるようにしたいのだが・・・」戦闘に関してはエドははっきり言って足手まといになるぞというカレンの言葉に静希は少しだけ呆れた表情を向ける、指導する人間がこんなで大丈夫なのだろうかと少し不安になってしまっていたアイナとレイシャの留学の話が進む中、静希の携帯にある連絡が来ていたそれはある意味、静希達が待ち望んでいるものだった「・・・じゃあ電話はポーランドからかかってきたってことか」『そうなるな、ポーランドの中部だ、これだけでもかなりの情報だ』電話の相手はテオドール、そしてその内容はかつて静希達が関わったジャン・マッカローネの所にようやくリチャード・ロゥ、本名チャーリー・クロムウェルから連絡がかかってきたのだというかかってきたのは十二時間ほど前、金銭の要求というのもあったが、ジャンが多少世間話をして情報を引き出してくれたらしい静希の見立て通り、彼は家族の為に本人がもつ以上のスペックを発揮してくれたことになる、この事件が終わったら正式に礼を言いにいかなければなと思いながら静希は情報を整理し始めていた彼が聞き出せたのは『これからが本番だ』という言葉、一体何を表しているのかまでは不明だが彼奴が何かを企んでいるのはまず間違いないだろう先に引き起こした召喚や歪みなどから、周りへの被害はかなり大きくなると思われる「テオドール、魔素の反応はどうだ?周辺諸国での調査結果、お前の方に入ってきてないか?」『生憎その手の内容は機密事項でな・・・正式な発表を待つほかない・・・少なくともお前の脅しが聞いている以上、ヨーロッパ圏内の人間ならこぞってお前に泣きつくだろうさ』現状、歪みのことに対してアクションが取れる人間は限られている特に静希の場合は現状を正しく把握した人間である上に悪魔の契約者だ、歪みの発生地点に悪魔の契約者がいたという事もあり、周辺諸国の人間としては静希に一報を入れてくるだろう「そうだといいんだがな・・・少なくともイギリス国内には反応は無いんだろ?」『あぁ、こっちは平和そのものだ、お前の手を煩わせることもないだろうさ、お姫様も人が変わったように大人しくなっているしな』テオドールからすると歪みの一件よりもセラがおとなしくなった方がありがたいのだろう、セラがどんな状態になっているのか静希も少々興味があったが、今はそのことよりも考えるべきことがあるポーランドの中部からかかってきたとされる電話、時間を考えるとまだポーランド国内にいる事も、周辺の国にすでに移動している可能性も十分にあり得る地図でポーランドの周辺の国を確認する、ドイツ、チェコ、スロバキア、ウクライナ、ベラルーシ、リトアニア、陸続きになっている国はこのくらいだポーランド自体が海に面した国であるためにどこに行くのかははっきり言って予想はできない、だが少なくとも海や飛行機などを通るより陸路で進んだ方が密入国は比較的楽だ特に個人の特定ができてからは空路での移動はかなり制限がかかっている、それは恐らく向こうも把握しているだろう、今回は近隣諸国に警戒網を張っていた方が確実だ「他の国がそれなりに本気になってくれればこっちとしても楽なんだけどな・・・俺たちだけじゃどうしても限界があるだろ」『そうでもないぞ、先の黒いのの影響もあってか、かなり躍起になってる国がほとんどだ、自分の国であんなものを起こされちゃたまらないってことだな』確かにそれが他国の問題であるのであればそれほど本気にはならないかもしれないが、それが自分達にも降りかかる火の粉であれば本気で振り払うだろうあの場で静希が脅しをかけて正解だったという事だ、いつどこで同じことが起こるかわからない『だがイガラシ、もし魔素の計測ができていないような場所にあれを起こされたらどうするつもりだ?こちらからは何のアクションもできんぞ』「それは問題ない、あれを起こすのはかなり準備が必要だ、普通の召喚と同じか、それ以上に準備に時間がかかるはずだ、ある程度生活できる場所じゃないと効率が悪い」ついでに言えば、召喚などで使われるのはエルフ達が龍脈と呼んでいる大地の力だ、そう言った力のある場所には総じて人が住みついているのだという水のある場所に人が集まるというのは古来から共通することでもあるが、強い龍脈のある場所は栄えると言われているらしいもちろん例外もあるだろうが、少なくとも人が全くいないところで事を起こすようなことはないだろうと静希は考えていたこれは静希の勘でしかないが、リチャード・ロゥは静希と同種の人間であると感じていた目的のためには手段を厭わない、被害の大小など関係なく効率よく物事を進めることを重視している次にアクションを起こす場所がどこなのか、次は何をしようとしているのか、それによって行動を決めなくてはならない特に先の歪みの一件でリチャードが単独ではなく味方を連れているという事も分かったカレンのようにたぶらかして協力させたエルフかもしれないが、また誰かを利用して事を引き起こそうとしていても不思議はないどう対応するべきかはその場の判断で下すしかない、少なくとも静希単体ではなく、エドやカレンの協力が不可欠だそこに鏡花たちを巻き込むかは正直決めかねている、だがリチャードが連れていた悪魔に関しては陽太の力が必要だと考えていた炎を発現する能力、陽太ならば問題なく対応できる、後はそれを鏡花が許してくれるかどうかである「取り合えず他に情報が入ったら教えてくれ、こっちでも確認しておく」『そうか、じゃあせいぜい大人しくしているんだな、こっちとしてもそのほうが楽だ』テオドールとの通話を切ると、静希は小さくため息をつく、次は逃がさない、次こそは静希はその想いを内に秘め、僅かに歯を食いしばっていた「またあの困ったちゃんが動き出すわけね・・・ったく忙しいったらないわね」通話を終えるとメフィがふわふわと浮きながら静希の下へとやってきた、先程の会話をある程度聞いていたのだろう、その表情はあまりいいとは言えない「お前としてもリチャードの相手は嫌か?」「いいえ、いやじゃないわ・・・私が嫌がってるのはその連れよ・・・」リチャードの連れ、静希の頭の中に思い浮かぶのはあの時連れていた犬のような悪魔、炎を操るアモンという悪魔あの炎を見ているだけに静希はその危険性を理解できる、あの時メフィがかばってくれたからこそ今こうして生きているが、あの場でメフィがいなければ一瞬で消し炭にされていただろう「お前から見てもかなりやばい悪魔なのか?」「やばいっていうか・・・まぁそうね、やばめの悪魔よ、ヴァラファールの沸点をかなり低くした感じかな」ヴァラファールの沸点を低くした感じ、何とも妙な説明だが静希は納得してしまうエドの契約する悪魔ヴァラファールは外見と違いかなり沸点が高い、それこそ子供二人に囲まれ戯れられても平気で佇んでいるほどだその風貌からまるで祖父のような暖かさを感じることもあるほどである、あれの沸点を低くした感じとなると、あまり想像したくない怖さを覚える「でもそんな奴を従えてるって・・・やっぱ細工とかされてんのかな」「その可能性が大きいわね・・・少なくともあいつは人に従うような奴じゃないし」アモンのことを知っているメフィからすれば、人間に従っている姿を見た時目を疑ったものだ、そしてすぐに何か細工をされていると気づいた可能なら静希のトランプの中に入れてやりたかったところだが、あの状況ではそれは許されなかっただろう「あいつの能力、炎を出すだけならそれなりに対処できるけど・・・他に能力とかあるか?」「ないわ、あいつはとにかく炎を出すしか能がないの・・・まぁそれが結構怖いんだけどね」「お前からしても怖いのか・・・相当だな」そりゃあねとメフィは軽く言ってのける、発現系の能力であればメフィの再現の能力の一つに加えることもできるかもしれないが、それは難しいだろうメフィ曰く再現できるようになるまではかなり面倒な手順を踏まなくてはいけないのだそうだ、悪魔相手にそれができるとも思えない「もしあいつと真正面からやり合うなら正直人間がいたら足手まといね・・・私とヴァラファール、オロバスがいればさすがに契約者だけを攻撃できるけど・・・」悪魔が三人そろえばたとえ危険な悪魔であろうと問題はないのだろう、だがその場に静希達が立つ余裕は恐らくないそれほどまでに危険な相手なのだ、その危険性の片鱗は静希も感じている「ちなみにさ、陽太があいつと戦った場合どうなる?」「・・・勝つことは無理でしょうね、ヨータじゃ悪魔に対して致命傷を与えられないもの」そもそも悪魔に対してどうすれば致命傷を与えられるのかは謎だが、少なくとも陽太の能力では悪魔を倒すことはできないらしいかつてメフィに一撃を加えたことがあるが、確かにびくともしていなかった覚えがある能力の相性というのもあるのだろう、悪魔に攻撃を加えるためには特別な何かが必要なのかもしれない「ただ、アモンの出す炎じゃ少なくとも能力を発動したヨータを倒すことはできないわ・・・肉弾戦でどうなるかはわからないけど」悪魔が肉弾戦、メフィが普段全くと言っていいほど肉弾戦を行わないからあまり印象に残らないが、彼女の基本的な力は強化状態の陽太のそれに勝る、青い炎を使った所謂全力を出した状態でどれだけその力に迫れるかはさておき、肉弾戦でも勝ち目がないかもしれないのだだがあの炎の中で自由に行動できる存在が身近にいるというのは大きい、なにせあの炎のせいで静希はリチャードを取り逃がしてしまったのだ万全な状態にするのであれば、今回の件に陽太を連れていくべきだろう、どこに行くことになるかはさておき、その場にリチャードがいる可能性があるのだ「陽太を連れて行きたいところだけど・・・どうするかなぁ・・・」「何よシズキ、いつもみたいに連れて行けばいいじゃない、実習とかの形でさ」「メフィストフェレス、マスターの気持ちも察しなさい、実習という形にすれば陽太様だけではなく、鏡花様や明利様にも危険が及ぶのですよ」オルビアの言葉にメフィはあぁそういう事ねと静希が何故悩んでいるかを理解したようだ彼女の言う通り、静希が悩んでいるのは陽太を含めた人間を巻き込むか否かである巻き込むだけなら容易にできる、またテオドールに実習という形で任務を持ってこさせればいいだけの話だ、だがそれはつまり静希だけではなく鏡花も陽太も明利も全員巻き込むことになるのと同義である召喚実験の日程が実習とかぶっていた以前の実習と違い、今回は実習のスケジュールともかぶっていない、まだどんなアクションをとるかも決まっていないために悩むのも早いかもしれないがどういう形で動くのかはあらかじめ決めておきたいのだなにせ今回はエド達とも合同で動くことになるだろう、悪魔の契約者が三人もいるような現場に鏡花たちを連れて行くのは少々考え物であるしかも実習という形となれば城島も必然的に巻き込むことになる、彼女は基本ノータッチを貫くだろうが、万が一の時どのような行動をとるかは静希も全く分からない「マスター、一度他の方にも相談したほうが良いのではないでしょうか、一人で考えていても堂々巡りするばかりです」「ん・・・それもそうだな」オルビアの言う通り、一人で考えていたところで同じことを繰り返すだけだ、幸いに静希は相談できる大人が何人かいる、まずは身近な存在から頼ることにしようと思い立った「なるほど・・・ポーランドか・・・」静希はとりあえず昼休みの時間を利用して城島に今回のことを相談していた、もし今後動くことがあるとしても、委員会を経由して他国の救援要請がやってきたとしても城島に話が行くのだ、相談しておいて損はないのである「一応その周辺諸国で何かしらアクションを起こすんじゃないかと俺は睨んでるんですけど・・・今回あいつらを連れていくかどうか悩んでて」あいつらというのが鏡花たちのことを指すのは城島もなんとなく理解はしていた静希が連れていくかどうか悩んでいるのは鏡花たちが足手まといになる可能性も、戦力になる可能性も秘めているからである「一応聞いておくが、何故ためらう?あいつらなら戦力としては申し分ないと思うが」城島の言うように、鏡花、陽太、明利の三人なら現場に行ったとしても十分に戦える、それがたとえ悪魔だろうと最低限の仕事はこなせるだろうだがだからこそ躊躇うのだ「正直言ってあいつらをこれ以上巻き込むのもどうかと思いまして・・・確実に悪魔がいるのも分かってるわけですし・・・」静希はリチャードを個人的に止めたい、というか排除したいと思っているしそれなりに因縁があるが、鏡花たちは別にこれと言って戦う理由はないのだ戦う理由も目的もないような人間を自分の勝手な都合で危険な目に遭わせるのはどうかと思ってしまう「なら質問を変えよう、奴らはお前にとって戦力にはならないのか?」「それは・・・なります・・・あいつらがいるかいないかっで戦い方もずいぶん変えられますし・・・」鏡花たちがいる事によって静希が得られるアドバンテージは計り知れない、鏡花の万能な変換能力に陽太の前衛としての実力、そして明利の索敵能力、どれをとっても優秀だ、あの三人がいるだけで静希はかなり自由に戦えるのだ「特に陽太は今回・・・いやリチャードのとの戦いでは必須と言ってもいいです・・・あいつが連れてる悪魔は炎を操るので」「なるほど・・・なら何故連れて行こうとしない?お前らしくもない、必要なら連れていく、不要なら置いていく、それでいいんじゃないのか?」「いや・・・だってさすがに危険すぎますよ、悪魔のいる場所にあいつらを連れてくのは」城島も教師の立場としては鏡花たちを危険な場に連れて行くのは拒みたいはずなのに、随分と今回は印象が違う、今の城島は鏡花たちを静希と一緒に行動させようとしているかのようだ危険なことに生徒を巻き込むわけにはいかない、城島はそう言う風に考える人間だったと思っていただけに、静希は若干違和感を覚えていた「そう言う意味で言えばお前もそうだ、危険な場所に突っ込もうとしている、お前がよくてあいつらはダメというのは理屈が通らん」城島の言葉に静希は返す言葉もなかった、静希の場合人外たちが身の回りにいるが、静希自身はただの人間だ、死なない体を持っているというわけでもない、そう言う意味では鏡花たちとリスクは何ら変わりはないのだただ悪魔を連れているというだけで現場に行くのは城島としては容認できないのだろう「こちらとしては依頼という形でお前が個人で現場に向かうより、少しでも管理できる実習という形の方がありがたい」「・・・先生たちが少しでも手を貸してくれるならそれもありがたいですが・・・先生方は基本傍観の姿勢を貫くでしょ?」「当然だ、基本は私達は引率だからな・・・まぁ自らに火の粉を向けられれば振り払うが」城島としても手を貸したい気持ちはあるのだろう、とはいえ彼女にも立場がある、相当緊迫した状況でない限り彼女たち教師が手を貸すのは難しいと考えるべきだ「だったらやっぱり俺みたいなのだけが行くべきです・・・俺と違ってあいつらはただの学生なんですから」ただの学生、その言葉に城島は吹き出す、いや嘲笑すると言ったほうが正しいかもしれない、今まで見てきた彼女の笑みの中でも少し特殊なものであるというのが静希も理解できた「ただの学生か・・・まるで自分が特別であるとでも言いたげだな」「・・・そりゃ・・・一応面倒の中心になってるわけですし」静希は良くも悪くも面倒の中心人物となってしまっていた、いや今まではそう見えていただけで実際の中心にいるのはリチャード・ロゥだ、静希も巻き込まれた立場とはいえ、鏡花たちよりは中心に近い位置にいる悪魔の契約者という、普通の学生の立場とも異なる場所に立っているのも事実だ、だがそれを理解したうえで城島はそれを一笑に付す「自惚れるな、お前がどんな存在になろうとうちの生徒であることに変わりはない、それもお前は能力的に言えばこの学校内で五本指に入るほどの劣等生だろうが」「そ・・・それは・・・」城島の言う通り静希の能力はこの学校内で五本指に入るほど弱い、喜吉学園の中に収納系統は何人もいるが、その中で最弱と言ってもいいほどの部類である無論能力の強弱だけが戦闘能力の全てではないが、数字は正直だ、城島にとって静希は厄介や頭痛の種であり、ただの学生であるのだ、特別なことなどありはしない「もし実習という形で関わるのであれば、少なくとも教師が一人、ついでに監視が一人つくんだ、戦力とカウントするのは間違いだが、そのプラスは大きいぞ」「・・・先生は巻き込まれても何も思わないんですか?」「実習の内容を決めるのは私ではない、それに何より、私は教師だ、子供のお守りをするのが仕事のようなものだ」誤字報告を五件分、総合評価ポイントが10,000越え、累計pvが19,000,000突破したのでお祝い含め2.5回分(旧ルールで5回分)投稿皆様のおかげでここまで来ました、本当にありがたい限りですこれからもお楽しみいただければ幸いです

城島の言葉に静希は考えてしまう、城島を巻き込むのも正直に言えば静希は乗り気ではないのだ、なにせ城島はただ偶然静希の担当教員になっただけなのだから普段こそこうして嫌味も言うし、厳しいことも言うが本質は優しい人間であるのは静希も十分に知っている、だからこそイーロンがなついているのかもしれない「それに、巻き込むにしろ当人たちの意見を聞くことも大事だ、もし奴らが嫌だというならその時はお前が単独で動くのもいいだろう、お前の班のことだ、班員としっかり話し合え」いかにも教師らしい言葉に静希は返す言葉も無くなってしまう確かに鏡花たちに話を通しておくのも必要なことだ、巻き込むにしろ一人で行くにしろ、相談は必要であるもっとも明利などに相談した場合有無を言わさずについていくと言いそうなものではあるが「ちなみに先生個人としては今回の件どう思いますか?どこの国が怪しいとか」「現時点では何とも言えん・・・だが一つ気になることがあってな」気になること、その言葉に静希は耳を傾ける、城島が何か情報を掴んでいるかもしれない、あるいは静希が気づけず、城島が気付けることがあったかもしれない少しでも手がかりになれば今後が動きやすくなる、そう考え静希は頭を回転させ始めていた「お前も知っていると思うがリチャード・ロゥ・・・いや本名はチャーリーだったか・・・まぁどっちでもいい・・・そいつの出身がドイツだ・・・通話があったポーランドの隣国だなと・・・」そう言えば以前リチャードの個人情報を教えられたときにドイツ出身の人間であると言っていた、静希もそれは覚えているテオドールなどの非公式な組織だけではなく、公的な司法機関に関わる人間がリチャード、本名チャーリー・クロムウェルの関わった部署などは徹底的に調べ上げたのだという未だ調査中の部分もあるが、彼の生家や住まいなどは特に念入りに調べたのだという結局特に収穫はなかったらしいが「ドイツで事を起こす可能性が高い・・・と?」「そうまではいわん、ただ奴がヨーロッパ圏で事件を頻繁に起こしているのにも何か理由があるのかもしれんと思ったまでだ・・・」リチャードが事件を起こした国はそれこそ数多い、その中のほとんどがヨーロッパ圏内、唯一アジアで発生した事件は日本だけだ今までリチャードは何かしらの研究機関、あるいはエルフなどの存在を利用して行動していたために、アジア圏では日本が最も仕事が楽だったというだけかもしれないが「未だに魔素のデータは挙がっていないんだろう?まだお前が動くような段階ではない、ポーランドの方はテオドールにでも任せてお前は班員と話し合っておけ」確かにまだ静希が動くような段階ではない、ポーランドからの通話が確認されたというだけでまだ事件が起こるとも確定したわけではないのだテオドールや各国の警察や軍が躍起になってリチャードを捜索しているという事もあり、未だ静希の出番はない静希が動くとしたら事件が起こる予兆である魔素の変動などが起こった時だけだ今はこうして頭をひねることくらいしかできそうにない、なにせ今動いたところでやることがないのだ目撃情報があったわけでもなく、すでに情報を得てからずいぶん時間が経過している、今現在もリチャードがポーランドにいるかも怪しいのだから「ところでお前の連れは何と言っている?相手にも厄介なのがいる事に変わりはないわけだが」連れ、それが人外たちのことを示しているのに気付くのに時間はかからなかった、なにせ静希の連れと言ったら陽太達かメフィ達のどちらかなのだから「一応・・・エドやカレンの連れと合同でかかればなんとかなると・・・ただ相手も戦力があれだけとは思えないんです」現在確認できている悪魔がアモンというだけであって、他に戦力を有していないというわけではないのだ今まで何度も召喚事件を起こしてきた人間であるだけに、もっとほかの人外たちを引き連れていても不思議はないそれこそ静希と同等か、それ以上に人外と共にいてもおかしくないのだ静希も大概人外を抱えているが、何も自分の力で召喚したりしてきたわけではない、むしろ静希はいろんなことに巻き込まれる形で人外を仲間にしてきたのだだがリチャードは自分の意志で人外を召喚できる、彼自身が召喚を行えるかどうかはさておいて、自由に手札を増やせる可能性があるのは事実だ「相手の戦力は最低でも厄介なのが一人というわけか・・・それならなおさら少しでも戦力が欲しいところだな」「それはまぁ・・・そうなんですが・・・」相手のことを考えれば再び鏡花たちを連れていくかどうかという話に戻ってくる、鏡花たちは良くも悪くも悪魔という存在に慣れている全く関わってこなかった軍人よりは役に立つ存在だ、能力的にも実力的にも彼女たちの存在は必須と言えるそんなことを話していると学校のチャイムが鳴り、昼休みの終わりを告げる「もう時間だ、相談はここまでにしろ・・・あとはお前達の間で話し合っておけ、また別の機会に話くらいは聞いてやる」「はい・・・ありがとうございます」昼食の時間を邪魔しても話を聞いてくれるだけ城島はいい教師だ、後は自分がいろいろと話をしなくてはいけない存在が残っているどう切り出したものかと静希は頭を掻いていた「で、私達の所に相談しに来たわけね」放課後、鏡花たちが訓練をするのを見越して静希は先程の相談を鏡花に話していた近くでは陽太が訓練しており、静希の近くには明利もいる、この場にいる三班の中で話を聞いて考える担当はそろっているのだ「あぁ・・・今回の件にお前たちを巻き込んでいいものかと」「その考えはもっと前に抱いてほしかったけど・・・まぁいいわ」今まで数々の面倒事に巻き込まれてきた鏡花からすれば本当に今さらな話なのだが、それでも静希の気遣い自体は嬉しいのか、呆れながらもほんのわずかに笑っている「実際のところどうなのよ、私達はその現場に行って役に立てるわけ?足手まといになるくらいなら行くのはいやよ?」「その点は問題ない、お前らがいてくれると俺としては凄く助かる、だから悩んでるんだよ」有能だからこそいてほしいのだが、個人的に連れて行くのは憚られる、静希の言いたいことも理解できるだけに鏡花はどうしたものかと悩んでしまう「明利はどう?静希についていく気あるの?」「うん、私は一緒に行くよ、静希君の助けになれるならなおさらだよ」この前は静希にだけ来た依頼だったためについていくことはできなかったが、実習という形でついていくことができるなら明利がついていかない理由はない静希が危険なことをしないように、自分が足枷となるとしても一緒に行動して見張っていないといけないのだ「・・・まぁ私としても頼りにされるのは悪い気はしないけどさ・・・んんん・・・」鏡花としては静希に頼りにされているというのは嬉しいのだろうが、それが理由で面倒に巻き込まれるというのも考え物であるこれで鏡花たちがただの足手まといだったら静希はまず間違いなく一人で行くことを選択しただろう、だが幸か不幸か鏡花たちは非常に優秀なのだそれぞれ分野こそ異なるとはいえ、能力者として三人は優秀な部類に入る、だからこそ静希は迷っているのだ「聞いておきたいんだけど、まず間違いなく敵は・・・その・・・あんたの同居人みたいなやつなのよね?」「まず間違いなくな・・・特にリチャードが連れてるのは炎を使う、この前もそれで取り逃がしたんだ」へぇ炎をねと鏡花は一瞬訓練を続けている陽太の方を見る陽太の能力は炎と同化する、あいてが炎を出すだけの能力なら陽太に万が一にも負けは無いただそれは相手がただの能力者であるならの話だ、相手は悪魔、高い膂力を有しているのであれば陽太にも敗北の可能性は十分にあるそのあたりを理解しているうえで静希は悩んでいるのだ、三人を連れていくかどうかを「・・・一応陽太の意見も聞いておきましょうか・・・陽太!ちょっと来て!」「ん?なんだ?話終わったのか?」最初から話など聞く気がなかった陽太は鏡花の一声で訓練を一度やめ、こちらへ走ってくるまるで犬だなと陽太の訓練っぷり、いや調教っぷりに静希は呆れながらも陽太の方に視線を向ける「静希がどうしようか悩んでるのよ、今度起こりそうな事件に私たちを連れていくかどうか?」「ん?なんで?俺ら邪魔なのか?」陽太の言葉に鏡花はむしろ逆よと返す、有能だからこそ連れて行きたいのだが、悪魔がいるという事がわかっており、先日の悪魔がいるのであれば危険も多い、そんな相手のいるかもしれない現場に三人を連れていくかどうか「役に立つならついてってもいいんじゃねえの?静希が行くなら俺も行くぞ、前に出るのが俺の役目だしな」役に立つならついていく、随分とシンプルな答えだ、静希の悩みなど知ったことではないというかのような直線的な回答、相変わらず陽太はわかりやすい「・・・はぁ・・・まぁあんたに聞いたらこうなるってわかってたけどさ・・・もういいわよ、訓練戻ってて」一体何で呼び出されたのかわかっていないのか、陽太は疑問符を浮かべながら再び訓練に戻っていった頭が残念なことを除けば陽太は前衛として優秀だ、悪魔の攻撃も一撃くらいなら耐えることができるかもしれない特にリチャードの連れる悪魔に対しては陽太は切り札的な存在になる、リチャードと接触する可能性がある以上、連れて行きたい存在だ「・・・で、どうすればいいと思う?」「・・・いつも勝手に話を進めるあんたにしては随分慎重ね・・・まぁこっちとしてはありがたいけど・・・」鏡花はため息を吐いた後で静希、明利、陽太の順に視線を向けていく、そして三人それぞれを観察した後、再度大きくため息をつく「班員三人が行くって言ってるんだし、班長の私が行かないとどうしようもないでしょ・・・いいわ、もう腹くくった、私たち全員連れてきなさい、ここまで来たら最後まで付き合ってやるわよ」鏡花の若干投げやりな決定に、明利は喜んでいた、一緒に行動できるという事を鏡花がしっかりと言葉にしたのだ、明利からしたら心強いだろう静希としては複雑な気持ちだが、鏡花たちがやる気を出している以上、それを無碍にするのも憚られる次に何かアクションがある場合、鏡花たちも一緒に行動することになりそうだと静希は一種の覚悟を決めたそしてその日の夜、静希はエドと話をしていたアイナとレイシャの留学の話が進み、学校側と委員会とで審議をしている間、エドたちは一度日本を離れたのだ滞在していられる期間にも限りがあるというのもあるが、何よりエドにもしっかりとした仕事がある、いつまでも日本にいるわけにもいかないのだ今後日本を拠点にすることを視野に入れているために、徐々にその仕事の内容を変化させているらしいが、そう言ったことにも時間と手間がかかるらしい、なかなか忙しそうにしている中今回情報が入ったことでエドは忙しい時期ってのは重なるもんだねとぼやいていた「今のところの情報はこんなもんだ・・・そっちでも掴んでたか?」『ポーランドっていうのはわからなかったけど、マッカローネ氏の所に連絡が入っていたのは掴んでいたよ・・・とはいえこれから忙しくなるかもね・・・以前の魔素のパターンに関してはまだかい?』「あぁ、そっちも情報が入り次第そっちに伝えるよ・・・あと一つやっておいてほしいことがあるんだけど」静希がエドたちに何か頼みごとをするというのは案外珍しい、何か商品を手に入れたいという事であるならむしろ良くエドに頼んではいるが、やっておいてほしいという、何か行動をさせようとするのは珍しかったそしてエドもそれをわかっているらしく、少しだけ嬉しそうにしていた『へぇ、君が頼みとは珍しい、何をすればいいのかな?』「あー・・・いやなんて言うかどちらかというとエドに頼むことでもないと思うんだけど、オロバスに予知をやっておいてほしいんだ、今後どう動くかにもよるけど、たぶんいくつかの未来に分岐すると思う、それを見てどういう未来があるのかを調べてほしい」カレンの契約する悪魔であるオロバスの能力は未来予知だ、確定した未来だけを告げるのではなく、現在から繋がる未来を見ることができる数秒時間が経過するだけでその未来は変化することが多いため時間的に遠い未来であればあるほど見える未来は多岐にわたるだがどの時期に静希達が行動を起こすか、そしてどの時期にどのような未来が見えているか、それさえつかめればある程度準備はできる未来予知の利点はそこにある、不確定であるとはいえどの時期に事件が起こるか、あるいは特定の誰かが行動を起こすのかが分かるようになるのだから無論特に何の予定もない状態では不確定すぎて特定の時期を把握することはできないだろうだが少なくともこの一ヶ月以内にことが起こるのであれば、どの時期に、そしてどこに行くのかは割り出せるはずだ、無論時間はかかるだろうが『なるほど・・・確かに不確定とはいえ未来をいくつも見ればそれなりに予測ができるようになる・・・か・・・』「あぁ・・・まぁオロバスはカレンと契約してる悪魔だから俺が頼むのもどうかと思うけど・・・今度なんか奢るとだけ言っておいてくれるか?」『ハハハ、了解したよ、僕からカレンに伝えておこう、他にできることはあるかい?』未来の情報を見極めた後、静希がするべきことはいくつかある、そのいくつかの中にはもちろんリチャードに対することもあるのだが、それ以外にもいくつかやっておきたいことがある特に情報面では必要なことだ、今回起こるかもしれない何かを防ぐためには特に必要だ「エド、お前は召喚がどうやって行われるか知ってるか?」『ん・・・僕は専門じゃないから詳しくは知らないけれど・・・確か大地の力を利用して・・・とかそんな感じだったかな』その内容が亡くなったエドの友人から聞いたのか、それともカレンから聞いたのかはわからないが、大まかに言えばその通りだ龍脈と呼ばれる力の流れを利用して召喚を行っている、少なくとも人間一人が行えるレベルの力ではないのは確かだ人間は魔素を体内に入れて燃料のように消費することで能力を発動する一回一回魔素をチャージして使っているというのは所謂電池を毎回入れ替えているようなものだだが召喚は龍脈という力を使うためにまず準備が必要になる、その代り膨大な力を使えるのだ、それこそ次元を繋げる程の「エルフから聞いたことの受け売りだけど、龍脈っていう大地にある力の流れを使って召喚は行われる・・・たぶん前回起こった歪みも、今回起こるそれも同じだ」『・・・あぁなるほど、じゃあそのリュウミャクとやらの流れる場所がわかれば、ある程度場所は絞れるわけだね』さすがにエドは頭の回転が速いだけあって理解も早い、静希が伝えたい内容を先回りして把握してくれるから話していて楽で助かる「これはたぶんなんだけど、カレンも一応エルフだろ?そのあたりの情報を知ってると思うんだ・・・無論全世界の龍脈を知ってるとは思わないけど」『すべては把握していなくても、ポーランドの隣国にあるものを把握すれば、初動は早くなりそうだね』本当にエドは理解が早い、とんとん拍子に話が進むとこちらでもありがたい限りだ龍脈の確認、恐らくそれをするにはエルフの協力が不可欠だ、問題は各国のエルフが協力的になるかどうかである国によってエルフの性格なども変わるだろうが、現地のエルフがどの程度政府機関、あるいは軍機関と協力体制をとっているかにもよる、こればかりは静希ではどうしようもない問題だ評価者人数が360人突破したのでお祝いで1.5回分(旧ルールで三回分)投稿これからもお楽しみいただければ幸いです

『でもシズキ、召喚の原理がわかっているのなら、各国の対策チームもある程度対策をとってるんじゃないかな?少なくとも召喚が行えそうな場所は特に警戒しそうなものだけど』「そうしてもらわなきゃ困る、何のために魔素のデータを渡したと思ってるんだ、そういう危ない場所に計測器を置いてもらう意味もあるんだ・・・もっともどれくらい進んでるかはわからないけどな」静希が魔素のデータを配布した近隣諸国の人間、あの場にいたのは外交を行う政府の人間がほとんどだっただろうが、あの場にいた人間だけで物事を判断するはずがない自分たちの国に戻ってから各研究機関、及び専門家に意見を聞きに行っただろう召喚をどのように行うか、そして召喚の応用であの事件を引き起こしたのであれば魔素の波形だけではなく龍脈の方にも注意を向けていても不思議はない後は各国の対応次第、どれだけエルフに協力を打診できるかという問題になってくる、政府自体が龍脈の存在を把握しているのであればありがたいが、それはまず無理だろうこの調査の度合いで各国の歪みに対してどれだけ真剣に対応しているかがわかる、これからどのように動くかにしろ協力的な国にはそれなりにしっかりとした対応をするべきだろう『ところでシズキ、もし次にこういうことがあった場合、僕らも一緒に行動するのはいいんだけど、メーリたちはどうするんだい?前回と前々回は協力してもらったけど』前回というのはジャン・マッカローネを捕まえる時のこと、前々回とはカレンの時のことだろう、確かにあの時は両方とも実習という形で参加したために明利達も一緒に行動していた恐らくエドも歪みの一件に関しては高い危険性を感じているのだろう、一見すれば弱弱しい明利がいるとなると気にするのも仕方がないかもしれない「一応悩んだんだけどな・・・あいつらついていく気満々だし、連れていくことにした・・・リチャードが連れてる悪魔に対して有効そうなやつもいるしな」悪魔に対して有効になる人間、エドの中には静希が共に行動をする三人の姿が浮かんだが、その中でそれらしい力を持っているとしたら陽太か鏡花だろうと予想していた少なくとも索敵に特化した明利ではないだろうという考えだが、その考えは正しい『そうなると、君としてはありがたいんじゃないかい?取れる選択肢が増える』「わかるか?一人での行動だとどうしても面倒だからな・・・そういう意味では助かるよ」単純な戦いにおいても、最も重要視されるのは武器の性能でも個々の実力でもなく、数の違いだ無論武器や実力だって勝敗に関わってくる重要なポイントでもあるが、ほとんどの状況において優位なのは数の多い方だ数が多いだけでとることができる選択肢が増え、できることも、その規模も大きくなる『まぁ君が決めたことなら僕としても反対する理由はないね、後はうまく三人を安全なところに配置するだけってところかな』「そのあたりは俺らが上手く立ち回るしかないだろうな・・・そっちはアイナとレイシャはどうするんだ?連れてくるつもりか?」静希の言葉にエドはそれなんだよとかなり重苦しくため息を吐いたどうやら静希が鏡花たちのことについて悩んでいたように、エドもアイナとレイシャのことについて悩んでいるようだった『彼女たちの意思を尊重するなら・・・まぁ早い話連れて行けと言われるだろうね・・・でも悪魔がいるような場所に連れて行くのもどうかと思うし・・・』以前カレンとの戦闘では彼女たちは近くで待機していた、それこそ実際に戦うところすら見ていないだろう彼女たちは今はまだ未熟だ、エドの指導のおかげで大人顔負けの技術を持っているかもしれないが、能力面、特に戦闘面においてはまだまだ荒削りなところが目立つそんな状態の幼い能力者二人を悪魔のいるような現場に出すわけにはいかない「今まで通り後方支援とかでいいんじゃないか?戦闘には加えられないだろうし」『そうなんだけどね・・・シズキの話を聞く限り少なくとも市街地戦が想定されるわけだろう?市街地に安全地帯がないことになる・・・そうなると・・・』静希が歪みの一件でリチャードと遭遇したのは町の近くの森だった、そして歪みの発生地点は町の中、次も同じようなことが起こるとしたらまず間違いなく市街地の中が戦場になるそうなると今までエドがそうしていたようにホテルなどで待機していても安全ではない可能性があるのだ「なるほどな・・・確かに悪魔の戦闘だと町一つ壊れかねないしな・・・」悪魔の戦闘能力はそれこそ町一つ潰せるレベルのものになる、その町の規模が大きければ大きい程被害も大きくなるだろう特に以前の戦闘でも健闘したが、局地戦を行うようなことになれば建物を破壊するようなこともあるかもしれない、そうなった時安全な建物などない可能性があるのだ『いっそのことヴァルを二人のどちらかにつけることを検討してるんだけどね・・・でもそうすると僕が圧倒的な足手まといになるし・・・』「・・・まぁ最悪うちの鏡花たちと一緒にいてくれれば邪薙を付けるけど・・・それでも建物ごと破壊されたら守りきれないかもしれないしな・・・あの二人を連れていくかどうかはそっちで決めてくれ」『・・・はぁ・・・これを話さなきゃいけないと思うと気が重いよ、あの子たちは絶対ついていくっていうだろうからね』エドの言葉に静希は苦笑してしまう、それだけエドが慕われているという事でもあるのだろう、子供を守りたいという気持ちもあり、一緒に行動して経験を積ませたいという気持ちもある、何とも複雑なものだ安全を考えるならどこかに預けたほうがいい、だが彼女たちの能力が必要になることがないとも言い切れない、そのあたりはエドの判断に任せるしかないだろうエドとの会話を終え、静希はそのまま床に就くことになるそしてそれから数日、静希の下にある情報が入ってきた例の魔素の波形が二カ所で検出されたのである各国からの報告は委員会を経由して城島へと伝えられ静希の耳へと入ることになった「動きがみられたのはドイツ北東部、そしてチェコ東部だ両国からお前宛に依頼が来ている、至急対処してほしいとな」「両方同時にこなせるはずないじゃないですか・・・ていうかまさか二か所同時とは・・・」静希は頭を抱えてしまっていた、選択肢が一つならば迷わず行動できたが、まさか二か所同時に反応が出てくるとは思っていなかったのである反応があった場所は直線距離に直しても五百キロ近く離れている、すぐにその場に行くには転移系統の能力者への協力を要請しなければいけないだろう「委員会としてはどちらに行くようにとか指示はありましたか?」「いや、委員会、そして依頼を出した両国はお前の意思を尊重するらしい、どちらに行くかはお前の自由だ」「また随分と無茶苦茶な・・・普通自分の国に来てくれるように頼むもんじゃないんですか?」静希のいうように、自分の国に危険が迫っていて、その危険を排除してもらいたいのであればどのような手段を講じても助っ人となるような人間を呼ぶのが自然ではないかと思える今回のような二か所同時というのは正直予想できなかったために二国のこの反応は少し異常に思えた「大方、お前に貸しを作りたくないという気持ちもあるんだろう、後はヨーロッパ諸国で協定でも結ばれたかだな・・・お前は一人しかいないんだ、もし同時に事が起こった時にどう反応するか、あらかじめ決めてあったのかもしれんぞ」静希はあの対策会議の本当に一部しか参加していなかった、事情を説明したら後は用済みという事で早々に会議場を立ち去ったのだ、その為あの場で決まったことは会議に参加していたアランから大まかに聞いただけであるもしその場で細かい協定などが結ばれていたのなら、この反応もおかしいものではないように思える「その二か所の場所ってのは、両方町の中にあるんですか?」「ドイツは少し大きめの市街地の一角だ、チェコ東部は国境にほど近い小さな町がある・・・被害を抑えたいのであればドイツに行くべきだろうな」被害の大きさで言うのなら恐らくドイツの方を対処するべきなのだろう、だがチェコの場所は国境に近い、規模にもよるだろうが甚大な被害を受けることに変わりはないだろう「・・・先生としてはどちらをとるべきだと思いますか?」「私はそこまでの考えはない、だが先日も言ったようにドイツの方は少々気になる、何かしら因縁があるように思えてな」リチャードの出身国であるドイツ、その場所で事件が起ころうとしているというのだそしてカレンの召喚の一件があったのもドイツだ、二度目ともなると何かあるのではないかと思えてならないドイツ、リチャードやカレンの故郷、確かに城島が気にかけるのも無理もないかもしれない「今回は実習という形で行く、スケジュールが多少狂うが、そのあたりはすでに委員会と学校側で合意済みだ、清水達にもあらかじめ通達しておけ」「了解です、あと、今回ちょっと一緒に行動したい奴がいるんですけど」一緒に行動したい奴、その言葉に城島はすぐに事情を察した様で目を細める元々細く鋭い目がさらに鋭くなることで、まるで睨んでいるのではないかと思えるほどだ「・・・あの連中か・・・まぁ相手が相手だから一緒に行動すれば心強いだろうな・・・だがどういう形で呼び込む?少なくとも実習という形をとっているんだ、偶然合流というのは難しいぞ」「そのあたりは考えてあります・・・まぁ俺から・・・っていうかどこかの誰かから個人的に依頼をするって形になりますけど」個人的な依頼、それはエドたちの経営する、というか今はまだ形だけではあるが、能力者を派遣する企業アイガースへ正式な契約を結んで現地に向かってもらうという事だ実際に行動を起こす人間が直接依頼をするわけにはいかないから多少間接的にエド達へ依頼を出し、向こうは向こうで勝手に動き、こっちはこっちで勝手に動くという形をとるのだ無論あくまで形式上、書類上での話ではある「なるほどな、あくまで偶然その場に居合わせて行動を共にするという形にするのか」「えぇ、可能ならそのどこかの誰かをしっかりした形にしてやりたいとは考えています・・・まぁそのあたりもちょっと考えがあるので、問題はないかと」エドたちの会社に次の仕事を入れるためにも多少のコネを作っておいた方がいい、そのコネがどのような形にするかも重要なことだそういう意味ではテオドールはアウトだ、なにせ裏社会に通じているような人間なのだから、未来ある会社に最初からそんなコネを作らせるわけにはいかない「どちらの国に行くか、時間はないが決めておけ、二日程度なら待つと先方も言ってきている」「二日・・・了解です、ちょっと話し合っておきます」城島から魔素の反応についての資料を受け取り、静希はそれに目をおとして考え始める二か所で同時に起ころうとしている異変、恐らくはまた歪みに関係することだろうドイツかチェコ、どちらに行くことになるかは静希の決定次第と言えるだがまずはエドとカレンにも報告しなければならない、もしかしたら新たな情報が入っているかもしれないのだ

「では次はクルシア達について

メルトア殿

アジトがどのような様子だったか、説明をお願いできますか?」 先ずはアジトの話から

 今回の件で仕掛けても受けてもダメならば、仕掛ける方を優先に考えたいとのことから出た質問に答える

「そうですね